第14話 白兵

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 それから二週間ぐらいたった、ある日。


 日課のランニングから帰って来ると、集まって机の上で何か作ってた。


 新聞を筒状に丸め棒にしたもの、何だろう? とりあえず、新聞棒と命名しとこう。


「おかえりなさい。」

 部長さんが振り向きながら

「丁度できたところです。」

 新聞棒を差し出した。

「これは?」

 手に取る。小南先輩が歩いて来て、頭に新聞で作った三角のものを被せた。

「えっ。」

 一瞬、頭に気を取られ、その後皆を見ると頭に新聞で作った三角のものを被っていた。確か、折り紙の兜だよね。新聞で折ってるから新聞兜だけど…。

「日向さん。今日は、基本の最後を教えます。」

 部長さんが、新聞棒を剣を構える様にする。

 慌てて手に持っていた新聞棒を構えた。

「基本の最後って、剣ですか?」

「近いけど少し違いますね。」

 よく分からなくて、頭から『?』がいっぱい出たかも。

「白兵戦。近い距離で手にした武器で戦うのが正しいと思います。剣、ハンマー、斧、トンファーに始まり、鉄球なんかもありますからね。」

 最後は趣味入ってる? 頭の中でロボットが頭の上で鉄球をグルグル回すイメージが、モヤモヤって出た。

「実際にやってみましょう。コックピットへ。」

「えっ。」

 驚いて声が出た。だって…

「あの、これは?」

 新聞棒と新聞兜を指差した。

「あっ。それね。そろそろ『端午の節句』でしょ。日本の伝統は大切にしないとね。」

 小南先輩が流した。か、関係無かったのかぁぁぁぁぁ!


 とりあえず、新聞棒と新聞兜を机の上に置いてからコックピットに入った。


 セットアップして地上へ。


「最初に、右の黒ボタンを押してから、赤トリガーを引いてみてください。」

 オレンジのグリグリの横の黒ボタンを右親指で押し、赤トリガーを引く。

 メインモニターの右上のライフルのアイコンが点滅した。

「ライフルアイコンが点滅しました。」

「もう一度赤トリガーを引いてください。」

 点滅していたライフルアイコンが、剣アイコンに変わった。

「剣アイコンになりました。」

「その状態で、黒ボタンを離してください。」

 離すと点滅が終わると同時にメインモニターの右端に映っていたライフルが消え、剣が出てきた。


 えっと、外から見ているとライフルを腰のフックに収納し、背中の剣を抜く感じ。

 剣は、最初背中に垂直に立っていて、真ん中辺りを中心にして柄の部分がぐるりと右に回り、右手で掴み構える。

 後で外から見るとカッコよかった。コックピットから見えないのは残念だな。


「使い方の基本は同じでターゲットマークを付けたところを斬ります。」

 やってると、今までと同じ感じだ。

「今度は同じ要領で、赤トリガーを二回引いてみてください。」

 カチカチ。

「あっ!」

 マークしたところを剣で突いた。こんな使い方もできるんだ、剣カッコいい!

「ターゲットとの距離で多少は踏み込んで追尾はしますが、あまり過信は禁物。他の白兵武器も似た感じで使えると思います。」

 なるほど、他の白兵武器も使ってみたい気がする。

 気に入って、しばらくブンブン振ってた。

「ちなみに、赤トリガー引いて、黒ボタンを2回押すと…。」

 部長さんが、言い終わる前にやってた。

「武器を投げますから…。」

 ビューン! と飛び。

 ザクッ! と的に刺さった。

「すみません。やっちゃいました…。」

「剣をマークして赤トリガーを引いてください。」

 モニターの映像が近付いて、伸ばした手が剣を持った。

「素手の時は、マークした武器を拾いますから、覚えておいてくださいね。」

 そんな事もできるんだ。凄いリアルだな…。

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