第9話 衣装

 ぜいぜい言いながら、部室の扉を開ける。

「戻りました。」

「お疲れ様。(✕5)」

 皆が口々に言ってくれた。


 部長さんを中心に、何か会議している様だった。ちなみに、私の頭から出ている「キュピーーーン」は、悪い予感を告げている。

 私に向き直った部長さんが

「日向さん、どれが良いですか?」

 机の上の紙を取り、こちらに見せた。

 それを読み、混乱状態になった…。

「これ何ですか?」

 書いてある事を口に出した。

「『巫女』『冥土服』『ウエスタン』『決戦特殊部隊』『サイバーパンク』って?」

 何故か『忍者』は、バッテンで消してあった…。

「ほら、あれですよ。」

 笑顔で部長さんが

「対戦する時の衣装ですよ。」

 衣装着て戦うんだ。驚き!

「それでね、日向さんはどれにしようかと皆で話し合ってましたのよ。」

 悪い予感も当たらなければ、どうと言うことはない、のだろうげどぉぉぉぉぉ! 当たったら痛い、などと思っていたら。


「私のお薦めは『ウエスタン』。ウエスタンハットに、左右袈裟懸けのガンベルト。それに茶色のマント!」

 言い放った部長さんの口の少し上では目が輝いていた。


「私はね、『冥土服』がお薦め!」

 小南先輩と強く押してくる。

「これ字が違うんじゃあ?」

 恐る恐る聞いた。

「これで、あってる!」

 力強く。

「冥土に旅立つ服だから。」

 罸(ばち)当たりますよ、絶対に! と心の中で突っ込んで、顔は硬直する。

「不気味な雰囲気出るじゃん!」

と、にこやか。


「『決戦特殊部隊』一択ですよ!」

 副部長さん、顔が怖いよ。

「ノースリーブの専用ジャケットに弾と手投弾をいっぱい下げて、背中にライフル! 手には四連装ロケットランチャー。仕上げに、顔に黒と緑のジャングル迷彩!」

「ど、どこの、コマンド部隊隊長ですかぁ」

 副部長さんの顔が一瞬、『バレた!』ってなったけど、当たってたか。


「萌系なら巫女に限ります!」

 百地先輩がの小南先輩の影から出て来た。

「最初は『忍者』とも思いましたが、在り来りだし、何より目立たないなので止めました。本当の忍者は目立ったら負けですからね。」

 バッテンは百地先輩の仕業か。


「やはり、『サイバーパンク』ならまだ手を出している人が少ないから大丈夫なはずですよ!」

 オペレーターさんに手を取られ握られた。

「サイバーパンクって…。」

「安心して、コーディネートは考えてあるわ!」

 どこからか取り出した紙を見せられた。そこにはラフ画があったが、何と言ってもいいのか解らなくて、左のほっぺがヒクヒクした。


「あの…。」

 何とか口を開けた。

「決まりましたか?」

 部長さんが目を輝かせている。

「考える時間ください…。」

 今までの盛り上がりが嘘の様に静まり返った。


「確かに、直ぐには決められないね。」

 副部長さんが言ってくれた。

「そうですね。この件は保留にしておきましょう。他に良いアイデアも浮かぶ可能性もありますから。」

 部長さんが椅子から立ち上がり壁に向かって歩いて行く。

 目で追っていると、壁に掛けられたホワイトボードに目が止まる。ペンを取った部長さんが、そこに書き込んだ。

 あっ…。一瞬固まった。今、書き込んだところの少し上に



☆向日葵 懸案事項☆

①養成ギブスとパワーウェイト


と書いてあり、更に今付け加えられた。


②コスチューム


 忘れてた無かったのぉぉぉぉぉ! 涙でアメリカンクラッカーできるよ。


 書き終え、ペンを置いた部長さんが振り向き

「さてと、日向さん。」

「は、はい!」

「昨日の動かし方は覚えましたか?」

「大体は。まだ、動きがギクシャクしちゃいますけど。」

「慣れればスムーズになるでしょう。」

と、ニコり。

「では、今日は次の段階にいきましょう。」

 次って、なんだろう…。ドキドキしなが、付いて行く。

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