第8話 放課後

 その後、どうやって放課後になったのか覚えてない…。たぶん、時が飛んだに違いない。

 気が付いたら、部室の前にいた自分。

入ろうか、帰ろうか悩んでいるところへ

「あら、お早いですね。」

 声がかかる。

 びくっ、としてゆっくり振り向き「は、はぃ。」

 消えそうな声。


 部室に入ると、まだ誰も来てなかった。

「そちらに更衣室がありますから、そこで体操服に着替えてください。」

「はい。」

 更衣室へ入った。


 キョロキョロ…。どのロッカーを使えばと、思っていたらドアが開き

「そこの、名前の無いロッカーを使ってください。」


 着替え終わり更衣室から出ると、タイミング良く皆さんが来た。

「おっ、新品の体操服。眩しいねぇ。」 

 えっと、小南先輩(だったはず!)が。


「パンツァー・イェーガーも基礎体力が無ければ、美しい戦いができません。」

 部長さんは一旦区切り、

「と言うことで、今日からは操作の練習と基礎体力作りをやります。」

「私達もやったねえ。」

 うんうんと目を瞑(つむ)り、数回頷(うなづ)く部員の皆さん。

「そんなにやりたいなら、皆さんもご一緒にどうぞ。」

 にこやかに部長さんが、勧めた。

「ほら、今日は機体のセッティングを試さないと…。」

「体育で疲れてて…。」

 皆さん、目線を外した。

「日向さん付いて来てください。」


 そこは、部室の裏。倉庫らしい小屋があった。

 鍵をカチャカチャやって開いた部長さんがシャッターを上げる。

「さあ、これを。」

って…

「これって…。」

「ほら、あれですよ。ランニングする時に使うアイテムです。」

「えーっ!」

 思わず大きな声が出てしまった。

「なに、なに!」

 他の部員の人達がやって来た。もしかして、何かあるかと期待してた? そんな事無いよね…。

「このタイヤって…。」

 困惑する副部長さん。

「ランニング用のアイテムですよ。」

 返す部長さん。

「いや、その種類が…。」

 小南先輩も同じく困惑気味。

「たまたま、知り合いがタイヤ交換したので貰っておきました。」

 にこやかな部長さん。

「これって、RV車の奴ですよね。」

 えっと、オペレーターさんのはず。


 そう、そこにあったのは大きなタイヤが四つ。

「ほら、大は小を兼ねるって言うじゃないですか。」

 確かにそう言うけど。私じゃ引けない様な。

「あっ! 解りました。」

 やっぱりいた百地先輩。

 何が解ったのだろうと、次の台詞を皆が待っている。

「あれですよね。タイヤの中に入り、崖の上からから転がし、回転に慣れる訓練ですよね。懐かしいなぁ、ちなみに私は樽でしたよ。」

 回想に入る百地先輩。

「こつは、崖の下でバウンドした時に、回転に合わせて体を捻りながら飛び出すですよ。」

 人間とは、自分の理解を超えるとフリーズする。


「最初なので、普通に走った方が…。」

 副部長さんが言ってくれた。

 少し考え、

「そうしましょうか…。」

 助かった!

「壁に沿って二周してください。」

 部長さんが指差した。

「はい、行ってきます。」

 走り出した私。


 一周目は大丈夫だったが、二周目はちょっとキツかった。日頃の運動と言えば、体育と朝寝坊ダッシュぐらいだから…。




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