避けられない。


悟った博斗は、まさかこんなに早く戦いにおしまいが来るとはと思いつつ、せめてものあがきか、両腕で身を固め、眼をきつく閉じた。


が、予期していたような痛みはなかった。

「…生きてる?」


シータの刃は、博斗に触れる少し手前の空間で静止していた。

びりびりと空気が悲鳴を上げて緊張している。


シータは刀をひいて後退した。

仮面の下の表情は見えない。

声も漏れない。

しかし、やや驚きを感じている気配が感じ取れた。


博斗も、なぜシータの一撃が自分に届かなかったのか、しばらくわからなかった。


シータの首がぐっと横を向き、博斗ではなく博斗の横にいるひかりを見て、すすすと剣を再び持ち上げるのを見て、ようやくわかった。


「ひかりさん…っ!」


シータは、博斗とひかりのどちらを狙うべきか、やや躊躇したように見えた。


「私はシータがオシリスを殺すところを見たいのだ」

マヌの、足元から這い上がってくるようなぞっとする声が響いた。

「貴様の番は後だ。いまは出てくるな」


「…っぁあああああっ!」

ひかりの悲鳴があがったかと思うと、勢いよくその場から突き飛ばされた。


矢継ぎ早にもう一度、ひかりの身体を衝撃が襲い、再びひかりは地面を弾んで壁に追いつめられた。


「ひかりさん! 自分の身体を守れっ! 俺はなんとかするからっ!」


ひかりはこくりうなずき、自分の前に腕を構えた。


それを見て、シータが博斗に向き直った。

シータが剣を眼前にXの字に構えると、ごうっとぞっとするような圧力が周囲に響いた。


対する博斗は、グラムドリングの刃を出し、歯を食いしばって正眼に構えた。


今度は、ひかりさんの助けはないぞ。


どうする? 博斗?

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