16

博斗は歯をきつく噛み締めた。


シータは、初めて博斗が陽光の街で見かけたときと同じ格好に戻っていた。

極彩色の飾りに、黒装束。

その顔には、無表情な仮面が戻っている。


「…操られています」


ひかりにささやかれるまでもなく、シータがマヌに再洗脳されていることは明白だ。

しかもおそらく、博斗とひかりを殺すことだけを吹き込まれているのだ。


だが、博斗にはシータを殺す事など、とても出来ない。

かといって、手加減して当たれるような敵ではない。


正面に対しているだけで、皮膚が剥がれて飛んでいきそうな戦慄をおぼえる。

少しでも気を抜けば、よみ違えれば、おそらく博斗など、一刀で殺されるだろう。


シータは両の腰からふた振りの直刀を抜いた。

ちらちらと光の残像が見えるほどゆっくりとそのふた振りを返し、胸の前で斜め十字に交錯させて、動きを止めた。


博斗は、考えがまとまらないまま、しかし、グラムドリングの刃を生んだ。


シータを、殺さないように負かさなければならない。

そんなことが…どうすれば出来る?


気の遠くなるような長い数秒が過ぎ、シータの刃が震えて鳴った。


シータは滑るようにやってきた。

二つの刃を構えつつ。


様々な防御を考えていた博斗だったが、シータの速度はとても人間の眼が追いつけるものではなかった。


シータの強烈な二つの刃が、左右から博斗に迫った。

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