12
博斗達は、高藻山に向かうべく歩きはじめた。
学園から道を抜け、高藻山へと。
電気ショックを受けたように、博斗達の動きは止まった。
止まらざるを得なかった。
なにかが、正面―つまり高藻山のほう―から、やってくる。
おそろしく強力な気配と殺気を漂わせて。
「なんだ、これはっ?」
「ピラコチャにしては…これは大きすぎる…しかし、他に考えられません…!」
ひかりも、博斗と同じように、戸惑いを隠せない様子だった。
すぐに音も聞こえてきた。
そして振動も。
急速に発生源が接近している。
おそるべき速さで、空を飛んでいるのではないとすれば、こんな動き方をするには、文字通り「直進」する他にない。
これが、博斗達の突入を阻止するためのムーの侵攻だということは、火を見るより明らかだ。
この侵攻に構っていては、手遅れになるかもしれない。
だが、この狂暴な突進をしてくる者が誰であれ、このまま暴走を許せば、陽光の街は一日も経たずに焦土と化すだろう。
侵略者、マヌ、そのどちらをも阻止しなければならないのだ。
どちらかでも野放しにするわけにはいかない。
「せんせ。どうするの? これはピラコチャだよ」
桜が眼鏡を輝かせて言った。
「どうにかして、相当にパワーアップしたみたいだけど」
「わかってる…」
博斗は考えた。
考えをまとめることをさえ妨害するように、どしんどしんと鈍い揺れが腹を揺する。
「ピラコチャを全員で叩き、全員でムーに突入する。この場合、時間が問題になる。それに、全員が負傷した状態でシータとマヌに立ち向かわなければならないかもしれない」
「博斗さん。二手に分かれましょう。私と博斗さんがマヌの宮殿へ。スクールファイブは、侵略者を食い止めます」
「それはまさしく敵の思うつぼじゃないか。こっちの戦力が分断されてしまっては、勝ち目がさらに減ってしまう」
「いえ。そうでもないのかもしれませんよ」
それまで黙っていた由布が、口を開いた。
「宮殿にピラコチャ、シータ、マヌが揃っていると考えるから七人全員でいく必要があったわけで、ピラコチャがこちらに出向いているのだとしたら…」
「その考えには、一理あります。非常に賢明な選択と思われます」
「ひかりさん…そんな無茶なことを…」
ひかりは首を横に振った。
「博斗さん。他にどう出来るというのですか? 時間と勝利と、その双方を満たせる可能性のある道は、他にないのですよ?」
「けど…俺とひかりさんだけでマヌとシータに挑むなんて愚行だよ。勝ち目はないってはじめからわかりきっているじゃないか!」
「シータさんを取り返すのです! そうすれば、必ずシーソーはこちらに傾きます」
「シータを取り戻す…」
博斗はうめいた。振動と爆音が接近している。いつまでも思案している時間はない。
「博斗さん!」
ひかりが厳しい口調で叱咤した。
そのとき、沈黙して正面を見すえていた由布が、青ざめた顔で呼びかけた。
「来ます!」
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