「パンドラキーです。パンドラキーによって宮殿の大きな力を逆に利用することが出来れば、必ず勝てます」


想像していた通りの言葉が稲穂の口から導き出され、博斗は眉をひそめた。


「パンドラキーは、完全に隠されている。俺でさえ、その在りかはしらない」


博斗は、あえて稲穂の眼を挑戦的に見たまま言った。

眼をそらすと、かえっていらない詮索をされそうな気がした。

たとえ誰であろうと、パンドラキーの所在は明かすわけにはいかない。それは、博斗と快治の誓いだ。


「そうですか?」

稲穂は博斗の瞳を見つめ返した。

稲穂の瞳に、博斗自身が映りこんでいる。


「まあ、仮に俺が知っていたとしても、パンドラキーを使ってなにかをするなんてことは考えないと思うけどね」


「しかし、そうしなければ、マヌに打ち勝つことは出来ませんよ?」

稲穂は博斗の瞳を見つめ返した。

稲穂の瞳に、博斗自身が映りこんでいる。


「連中と同じことをして勝ちを得てもしょうがないじゃないか」


「しかし勝たなければすべて無駄になりますよ。力は使ってこそ意味があるのです」

稲穂は博斗の瞳を見つめ返した。

稲穂の瞳に、博斗自身が映りこんでいる。


「そうだな…せっかくある力は使わなければ。でも俺は誰にもパンドラキーの在りかを教えるわけにはいかない」


「とするといまは、パンドラキーは博斗さんが持っているのですね?」稲穂は博斗の瞳を見つめ返した。

稲穂の瞳に、博斗自身が映りこんでいる。


「持っているというわけじゃあ…ない。場所を知っているだけだ」


「そうですか。どこにあるんですか?」

稲穂は博斗の瞳を見つめ返した。

稲穂の瞳に、博斗自身が映りこんでいる。


「誰も…気付かない…場所。隠してなんか…いないんだから…誰も気付かない」


「隠していないのに見つからないとは、いったいなぜですか?」

稲穂は博斗の瞳を見つめ返した。

稲穂の瞳に、博斗自身が映りこんでいる。


「誰も…それがパンドラキーとは気付かない。なぜなら…」


「なぜなら?」

稲穂は博斗の瞳を見つめ返した。

稲穂の瞳に、博斗自身が映りこんでいる。


やがて頭から布団に倒れた博斗をそのままに、シータは部屋を出た。


博斗が意識を取り戻すのは、これから二時間後、実に四時過ぎのことになる。

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