「やはり、ホルスは口だけの男ではないようですね」

博斗の横で、ひかりが白衣を脱いだ。

「彼の不始末は私がつけなければ…」


「ひかりさん。もちろん、俺もやってみますよ」

博斗は、青白い顔のひかりの肩に静かに手を乗せた。


ひかりは、大きな念をレッドめがけて放った。

オオダコムーの肢よりも先に、見えない手がレッドの体を下から救い上げ、さらに空高く放り上げて命を救った。


「レッドアロー…」

レッドは、弱い声でレッドアローを呼んだ。

レッドアローはすぐに空から舞い降り、レッドはその背にまたがって空に逃れた。


「ぬうっ!? イシスにオシリスか。お前達はあとにしようと思っていましたが…」


「あいにくだったな、タコ焼き男! 陽光学園の戦士も五人で終わりじゃないんだな、これが」


「生身の人間ごときが!」

オオダコムーは、肢を柔らかい状態に戻すと、今度は博斗めがけてそれを伸ばした。


博斗はグラムドリングをひこうとしたが間に合わなかった。

その白い刃に、蛸の肢がぐるぐると巻きついた。


「カーカッカッカッ! これでお前の武器は封じましたよ!」

オオダコムーは、また新しい肢を出した。

「お前から殺してくれます!」


オオダコムーの六本目の肢が、針となって博斗めがけて突き出された。


博斗はほくそえんだ。

「科学者のわりには洞察力がないな、あんた」

「な、なにっ!?」


「グラムドリングの刃は、どんな形にもなるんだぜ。お前の柔らかい頭みたいにな!」

博斗が念じると、グラムドリングの刃は姿を変えた。


五本目の肢の絡まっている真ん中の部分が急激に細く紐のようになりイソギンチャクのように無数の紐状に分裂すると、逆にオオダコムーの五本目の肢を縛り付けた。


「自分の肢でも切りやがれっ!」


六本目の肢が、五本目の肢を貫いた。

緑色の鮮血が噴き出し、五本目の肢はブッツリと切断された。


「ぐがあぁぁぁぁぁっ!」

オオダコムーが悶絶して地面にうずくまった。

「おのれ、このオオダコムーの肢を五本も奪うとは! この肢は一本一本がお前達一人分に相当する戦力を持つというのに!」


「なるほど。それじゃあ、お前の肢の残りは三本。こっちの残りはレッド、ひかりさん、俺で三人。これで五分と五分ってところか」

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