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気を失っていることすら出来ないほど悪夢のような痛みが全身を襲った。
唯一の救いは、痛みがあるということそれ自体で、痛みがあるということは生きているということなのだとオシリスは自覚できた。
這いずって起き上がろうとして、右手が使えないことに気付いた。
右手は黒く焼けただれ、本来あるべき形と大きさを失っていた。
ふと見ると、いまいましい爆発を起こした黒い棒がすぐ傍らに転がっていた。
その存在がやや恨めしくもあったが、限界を超える乱暴な使い方をしたオシリス自身に責任があるのだ。
いままでこの武器によって救われたことの多さを考えれば、このまま放置しておくにはしのびない。
オシリスは懐にそれを突っこむと、頭を垂らして、ゆらゆらと体をふらつかせたままだったが、中腰までやっと体を起こした。
人の声が次第に遠ざかっていくのがわかった。
オシリスが倒れていたのはちょうど窪地のような場所で、意識してそこを覗こうとしなければ、よもや人がそこにいるとは気付きもしないような位置になっていて、それが幸いした。
オシリスは、草のより茂っているほうへと中腰で歩いていき、そして、腰丈ほどの高さの茂みにたどり着くと、そのなかに倒れこんで、身を横たえた。
そして腕を体重で強引に押さえつけて感覚を麻痺させたまま、眠った。
夜になってから目を覚ました。
目を覚ますと茂みから出て、夜道を歩いた。
もしムーの警備が通常通りであれば、シータの塔の脇を歩いてオシリス達の陣地に戻ることなど不可能だっただろう。
だが、運はオシリスに味方した。シータの塔の歩哨はいなかった。
オシリスは知らないことだが、この間、イシスが、侵入者の残党がいる可能性を示唆し、戦闘員の多くを自分の塔とホルスの塔に向けて移動させていたのだ。
オシリスは、ムーの宮殿から遠ざかっていった。
夜空に光る、いまは三つとなった光点が、ゆっくりと小さくなっていった。
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