12
遥は迷わなかった。
「どおおぉぉぉけええぇぇぇっ!」
スクールレッドとなった遥は、着地しざま、息があるともないともわからなくなってしまって地面に倒れている隼を脇に抱くと、大胆にも正面の大蛇の頭を踏み台にしてひょいと向こう側に抜けた。
隼の体を背中にまわして、おぶることにした。
ふうふうと苦しげな息づかいが聞こえて、レッドはほっとした。
それに、気絶してるなら、遥がスクールレッドであると知られることもないし、一石二鳥かもしれない。
「ちょうじょう…」
「え!?」
レッドは首を回した。
すがるような隼の赤い瞳に出会った。
ど、ど、ど、どうしよう!? あたし、いま変身してるのよ!
「…え、えーと、その、こ、これは…」
「ちょうじょうに…。おやしろにぼくをつれていって。そうすればぼくはへいきだから! はやく! はるかさん!」
「は、はいーっ!」
見た目のことなど気にする様子もなく、隼が必死の口調で遥に懇願してきたので、レッドもそんなことはどうでもよくなった。
しゃっきりと返事をすると、枯れ葉の積もる道をさらにひた走ることにした。
薄い木立を背景にして、ぽつねんと小さな社があった。
左右には小さな地蔵が並んでいる。
レッドは急ぎ足で社の前に進んだ。
「こ、ここでいいの?」
「なか。やしろのなかに…」
レッドは、社の戸の前に立った。
格子状に組み合わされた木枠で出来た戸だ。
ほんらいその前面には、しめ縄と小さな鍵がつけられていたようだが、いまはそれが外されている。
レッドは首を傾げた。
誰がこんなことをしたんだろう。
あのツチノコ怪人と関係があるのかしら。
そっと戸を押し開けると、なかが薄暗いことがわかった。
少しかび臭い。
「ありがとうはるかさん…。ぼくはここでやすみます…」
隼が言った。
レッドはうなずいて隼をそっと床に降ろした。
「ここでじっとしてるのよ? もう、超激速で片づけて戻ってくるからね!」
「ええ、じっとしていますよ。遥さん、あとはお願いします」
そう答えた隼の声が、気のせいか急にはっきりとしたように感じられた。
レッドは、ちょっと首をひねりながらも、社を再び飛び出した。
飛び出したところに、待ってましたとばかりに石段を上がってツチノコ怪人が姿を現した。
「見つけたぞ! かかれぇ!」
怪人は間髪入れずに命令する。隼がいるここで戦うわけにはいかない。
「こっちに来なさい!」
レッドは、石段の分の高さを一気に飛び降り、枯れ葉の積もる地面にバフッと着地した。
枯れ葉が背の高さまで舞い上がり、桜吹雪ならぬ枯れ葉吹雪となった。
振り返り見上げると、いまレッドがそうしたのとまったく同じように、ツチノコ怪人の白い巨体が宙に舞った。
続いて戦闘員達も続々と。
「ちょっと、なんなのよ! いつもとやる気が違いすぎるじゃない!」
思わず怒鳴ったレッドのすぐそばに、斜面を滑り降りてきた怪人がどすんと着地した。
「スクールファイブ! 高藻山から逃がすわけにはいかん!」
「くっ!」
レッドは、身構えた。
妙だ。
明らかにいままでの戦闘員や怪人とは、気迫が違う。
整然としているというのだろうか。戦闘員の動きも奇妙に秩序だっているし、追いかけるしつこさもいつもの戦闘員と比べると、異常なほどだ。
高藻山に、なにか、あるのかしら? あたし達に知られてはまずいようなことが?
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