12

進むに連れて霧はどんどんと濃くなり、ほとんど泳ぐようにして五人は進んだ。


ひときわ濃い霧の中、ピーピーと鳴るおもちゃの笛のような音が聞こえ、五人は歩を緩めた。

「この音のするところに怪人がいるみたいね。さあ、一気にいくわよ!」


霧が突然晴れた。

十メートルほどの、半球型の空間が存在した。


その中央に、思わずレッドはそれを見てくすりとしてしまったが、巨大なヤカンがあった。

それもただのヤカンではない。ピーピーケトルだ。


ヤカンの蓋がカタカタカタカタと揺れ、そこからもうもうと蒸気が吹き出ている。

蒸気は頭上に上がっていくと、そこで白く充満し、どんどん四方に流れていた。


さっきからやかましいのはこれが原因だったのだ。


ヤカンが立ち上がった。針金のような手足が生えている。


霧の壁を突破してきた五人に、怪人は驚き慌て、さらにピーピーと蒸気を頭から吹き出した。

「蒸気怪人、ヤカンムー!」


「この霧はすべてあんたの仕業だったのね! まったく、面倒なことしてくれるわ!」


ブルーが後ろからジャンプし、空中でぐるぐると回転しながらヤカンムーに向かった。

「たいがー、しょっとーっ!」


ブルーは、ヤカンムーの側部に、輝く足の軌跡が残るほど強烈な一撃を送った。


丸みを帯びているヤカンムーの胴体が、べこんといびつにひんまがり、そしてその衝撃で、ヤカンムーはふらついてどうっと倒れた。


「スクールスティックよ!」

「オッケイ!」


五人はスティックを手に持ち、ようやく立ち上がったヤカンムーをぐるりと囲んだ。


グリーンがボールを自分のスティックについているネットに放り込み、ヤカンムーの頭を飛び越えるようにしてジャンプする。


「おおっ?」

ヤカンムーの目がグリーンの動きを追った。


グリーンはすぐさまボールをイエローに送った。

「イエロー!」

「ブラック!」

「ブルー!」


ボールのやりとりを追っているうちに、ヤカンムーは目を回してふらふらし始めた。

「おお、おおおっ?」


「レッド!」

ブルーからレッドにボールが受け渡され、レッドは弓なりに体を反らして、スティックを後ろに振り上げた。

「アターーーーーーックッ!」


ボールはエネルギーの炎をまとって直進し、ヤカンムーは大爆発を起こした。


ヤカンムーの破片がカンカラと地面に落ちていくなか、五人はすとっと着地して、腕を突き合わせた。

「よしっ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る