16

快治は、ピラコチャが飛び上がったのを見て、脱兎のごとく駆け出し、手近な木陰に転がりこんだ。


クロスムーは怒りに震え、叫んだ。

「それが答えですか! ならば、覚悟しなさい! お前達の力がいかに無力か、思い知らせてやります!」


クロスムーは快治が隠れていると見当をつけたあたりを向いた。

クロスムーの前面の表面が緑色のに発光したかと思うと、ざあっと音を立ててクロスムーの正面に立っていた木々の葉が一斉に吹き飛び、裸をさらした。


快治の姿は丸見えとなった。

クロスムーの目が輝き、カッと電撃が快治のいる地面をえぐった。

土塊と木の破片が飛び散り焦げ臭い臭いがした。

快治はその一撃で気絶して倒れた。


「人間が」

クロスムーはスライドするようにして快治に近づいていった。


コンッと、クロスムーの裏側に、蛍光色のテニスボールが当たった。


苛立っているクロスムーを振り向かせるにはそれだけで充分だった。

「何者です!」


「決着を、つけに来たわ!」

石段を登りきったところに、遥達が並んでいた。

さっきの戦いの傷もほとんどそのままで、制服も腕章もあちこちが、ほころび、焦げ、破れていた。


「ほう。スクールファイブ。懲りずにやってきたのですか。もういいかげんくだらない戦いには飽き飽きしました。今度は、望み通りお前達を殺してあげましょう」

クロスムーは哄笑した。


「そううまくいくかしら。今度のあたし達は、さっきのあたし達とは違うのよ!」

…変身できれば、ね。

遥は啖呵を切りながら、心臓が高鳴って仕方がなかった。


「面白い、ならばスクールファイブになりなさい! また変身を破ってみせましょう!」


遥は目配せをして左右の四人と視線を交わした。

みんな知っている。

この変身にすべてがかかっている。


変身出来るか、出来ないか。

出来れば、きっと勝てる。

出来なければ、きっと負ける。


変身が成功する自信は、ほとんどない。

たぶん、クロスムーに破られてしまう。

でも、やってみるしかない。

少しでも可能性があるのなら、やってみるしかない。


遥はきつく拳を握り締めた。

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