13

白百合仮面は博斗を肩に担ぎ、とんと弾んで堂の裏側に飛んだ。


地面に降ろされた博斗は、そのときに右手をこすり、焼けるような痛みに顔をしかめてもんどりうったが、悲鳴だけは上げずに歯を食いしばった。


白百合仮面はすぐに博斗を助け起こし、右手首をつかんだ。


ドクロの下からふうっと驚きの息が漏れるのが博斗にもわかった。


「この手はどうした?」

「ピラコチャに踏み潰された。もう、ぐちゃぐちゃだ」

「生身の人間相手にむごいことを」


白百合仮面は手を伸ばし、地面に落ちている小さな木の枝を何本か拾った。

そして自らのマントの端を破り取ると、木の枝を添え木にして博斗の指を一本ずつ伸ばし、伸ばしたまま固定していった。


そうされている間は、不思議なことに痛みを感じなかった。

代わりに、覚えのある感覚が手のひらを包んでいた。


痛みを和らげる麻酔のようなものを白百合仮面が施しているのか?

白百合仮面はやはり、ムーの力の使い手なのだ。

それに、この感覚は確かにどこかで覚えがある。


ひかりさん?


よく似ているような気がする。だが、違うような気もする。


「少なくともこれ以上の悪化は防げる。あとはあいつになんとかしてもらえ。あいつならこの怪我でも癒せるだろう」


「あいつ? あいつって、誰だ?」


白百合仮面は答えなかった。


博斗の混乱した思考がぐるぐると回った。

なにかわかりかけている。


白百合仮面はひかりさんではない。

だが、この感覚といい物腰といい、白百合仮面は女だ。

それも、ひかりさんによく似ている。


「君は、誰だ?」

博斗は尋ねた。

「誰なんだ?」


「…私にもわからない」

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