13

ひかりが微笑しながら保健室に戻ると、ドアの陰に立っていた稲穂が保健室に入ってきた。


稲穂はひかりに尋ねた。

「もう彼をあの子達に渡していいのですか? もっと、一緒にいたかったのでは?」


「いいんですよ。私はあの人のそばにいて見守っていることが出来れば、それでいいんです」


「その気持ちは、よくわからない…」

稲穂は渋面をつくった。


「ともかく、ご苦労様でした」

「気遣っていただかなくても結構です。私が自分でやっていることですから」

「私から頼みこんだことかも知れません」

「頼まれた記憶はありません」

「暗黙のうちに」

「…」


こうして、陽光学園のバレンタインデーは、なんとか丸く収まろうとしていたが。


チョコムーとスクールファイブ&白百合仮面の戦いを、誰にも気付かれず巧妙に気配を隠して観察していた者達の存在は、いまだ、誰も知らなかった。


「さあ、戻りますよ。もう充分、奴等の情報は手に入れたでしょう?」

ホルスが、傍らの怪人に声をかける。

「ええ。あの程度の者達、僕の手にかかればたやすいものです。むしろ、あの白い奴のほうが厄介もののようですね。奴に邪魔されないよう…作戦を練るとしましょうか」

「そうですね。くっくっくっ」


ホルスと怪人は笑い合った。

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