第三十六話「悪夢はふたたび」贈答怪人チョコムー登場

第三十六話「悪夢はふたたび」 1

「ホルス。約束の一週間は過ぎた。まだ神官怪人の起動は出来ないのか?」

マヌの声は苛立ちを隠そうともしていなかった。

「アカデミーの首席卒業生にのみ贈られるはずのあの剣を使う者が、スクールファイブの側にいるというのに!」


「もう、ほんのすぐなのです。それこそ数時間。そうすれば、コアを埋め込んだ、脅威の超パワーを持つ怪人を動かすことが出来ます」


「その言葉、何度聞かされたことか!」

マヌは激昂し、ホルスを威圧した。

「今度は真であろうな?」


「は、はい、もう確実ですとも。今回の怪人が時間を稼いでいる間に、必ず」

「それならばよい」


「陽光市の人間達はもうすぐバレンタインという奇妙なイベント一色になります。バレンタインとは、女が自分の恋する男にチョコレートを贈るいうそれは奇妙なイベントでして…。そこで、そのイベントを利用してたっぷりとやってみせますよ。さあ、出て来なさい!」


ホルスの声に答え、通路の奥からどたばたと駆けてきた怪人が、ホルスの横に並ぶと、ときの声を上げた。

「贈答怪人、チョコムー!」


チョコムーの胴体は大きなハート型チョコレート。

ホワイトでこうメッセージが書かれている。

「割れ物注意」


ピラコチャはげらげらと笑った。

「おいおい大丈夫かあ? 戦った途端に割れたりしないだろうなあ?」


「ふふ。チョコムーは基本的には肉体派ではありませんからね、心配は無用ですよ。チョコムー、お前の計画を総帥にお聞かせするのです」


「おうよ。馬鹿な人間どものチョコレートを、すべて毒入りにしてやる。チョコをもらった男はみんな頭がおかしくなって暴れる。そうすりゃあ、チョコを渡した女は絶望と失意のどん底、悲しみに打ちひしがれるってわけだ!」


ホルスは立ち上がると、チョコムーの肩を叩いた。

「ふふ、その調子です、さあ、行きなさい! 人間達を悲しみの底に叩き落としなさい!」

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