5
「ちがうんだな~。そこでななめを向いてるときは、右手はこしにあてたままなの」
と、玉次郎は男の子の手を腰につけさせた。
「よろしい。今度はオッケーだ。それでこそ君たちはほんもののゲンガマンだよ」
子どもたちは目を輝かせて玉次郎にうなずいた。
「はい、ちょうかん!」
「うひょひょ~」
玉次郎はテングになった。
「ちょ、長官! それこそ男があこがれる永遠の職業! 長官、長官、長官だってさ!」
玉次郎の頭をぽかりとあずさが殴った。
「用が済んだのなら、早く帰りますわよ」
「痛いな~。何もなぐらなくてもいいじゃないか」
玉次郎が頭を押さえると、二人の子どもがあずさの前に立ちはだかった。
「ちょうかんに悪さをするお前は、ワルリアン女王だな! ゲンガマンがやっつけてやる!」
二人は、手に持っていたおもちゃの剣を振り回してあずさを攻撃した。
「い、いたっ! ちょっと、玉次郎、なんとかしなさい!」
だが、玉次郎は笑って見ているだけだった。
あずさは逃げ出して、博斗達のところにやってきた。
「まてー!」
小さなヒーロー達もあずさを追ってやってくる。
あずさがやってきて通り過ぎると、博斗は、やってきたゲンガレッドとゲンガブルーを通せんぼした。
「まあ、そのへんにしとけ」
「うわわっ!」
玉次郎がぱたぱたとやってきた。
「あ、お…にーさん、こんにちは。…ねえ、おにーさん、ってなんか呼びにくいよ」
「おう、そうか。じゃあ博斗おにーさんと呼びなさい」
「はくとさんだね」
「博斗おにーさんだ」
「うん、それでさ、はくとさん、もしかしてゲンガマン知ってるの?」
「博斗おにーさんなんだけど。まあ、いいや」
ちょっとがっくりした博斗だったが、すぐに頭を切り替え、素早く計算した。
翠にプレッシャーをかけてみよう。少しずつ。
「知ってるもなにも。なんたって、この翠お姉さんが、今度の土曜日にゲンガマンショーをやってくれるんだぞ」
「ええっ、ほんと?」
玉次郎の目が輝いた。
翠は博斗に抗議した。
「ち、ちょっと、博斗先生。おかしなことを言いふらさないでいただけます?」
「なんで? なんにも変なことないじゃないか」
「ねえねえ、はくとさん。僕も連れてってよ」
「おう。いいぞ」
「先生、勝手に話を進めないでいただけます?」
「なんだ、誘っちゃいけないのか? せっかく楽しみにしてるのに? 翠君は子どもに冷たいのかな~?」
「そ、そんなことありませんですわ! わかりました! 一番前の席をキープしますわ。何人でもどんといらっしゃい!」
「よかったな、玉次郎」
「うんうん。戦隊は男のロマンだよね」
「おおーーーーっ! お前も男のロマンがわかるかーっ! よしよしっ、では俺の弟子にしてやろう!」
「おっす、師匠!」
意気投合する二人に、翠はあきれていた。ふと見れば、あずさが同じようにあきれている。
二人のお嬢様は並んでどっとため息をついた。
「あずさ様~」
玉次郎が駆け寄ってきた。
「あずさ様も行くよね?」
「はあ? わたくしがそんなくだらないものに行くわけないですわ」
「ええ~っ? でも面白いよ」
「イヤだったらイヤ」
あずさはそっけない。
気がつくと、博斗が翠の傍らに立っていた。
「なにか、あずさに言ってやりたいことがあるんじゃないのか?」
翠は、はっとして博斗を見た。
「…別に、ないですわ」
「そう、か」
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