11

「出でよ、戦闘員!」

モチムーが叫んだ。

だが、戦闘員は現れない。

「し、しまったーーーーっ! 年末年始は暇を出したんだったーーーっ!」


イエローが俄然張り切って前に出た。

「チャンスですわね。ではまず…」

博斗はイエローを見てうんうんとうなずいた。

なんとかまともに戦ってくれそうだ。


「…スクールフラッグですわ!」

博斗はこけた。

「いきなり必殺技か~! セオリーってもんがあるだろーっ!」

「セ、セロリ?」

グリーンがあたりを見回した。


「いい、もう。なんでもない。勝手にやってくれ」

博斗はいじけた。


五人はスクールフラッグを発動した。

宙に持ち上げられたモチムーだったが、ものの一メートルもあがったところで天井にぶつかり落下した。


はらはらと旗がほどけ、モチムーはいそいそと立ち上がる。

「あ、あら。高度が足りませんでしたかしら」


落ちこんでいた博斗は、すっくと立ちあがった。

「こいつはどうやら、俺の出番だな!」

博斗はグラムドリングを抜いて、モチムーの正面から、銀色に輝く必殺剣を繰り出した。

「博斗、ダイナミック!」


博斗ダイナミックの一撃を浴びたモチムーは倒れたが、最後の力を振り絞って立ち上がった。

「巨大ムー!」


一声叫ぶなりモチムーがみるみるぷくうと膨れ出し、部屋からはみださんばかりになった。

「な、なに! どういうことだ!」


「ムーの怪人は、体の細胞配列を変え、巨大化することが出来るのだ!」

どこかで聞いたことのある渋い声がした。

「そんなところでマイク持ってなにしてんですか、理事長?」

「いや、まあ、老後を考えて副職でもしようかと思ったんだが…」


「校舎が壊れる。外に逃げるんだって」

なんとブルーが冷静に言うのだった。


巨大化したモチムーは、どこにあったのかよくわからないが、大きな岩を足でがんがんと蹴散らした。


「アンドロメダ~!」

博斗はなぜかよくわからないがそうすべきだと思い、腕時計に向けて、特別改造済みワゴンを呼ぶ声をはりあげた。


しかし。


「こないね…」

ブルーがぼそっと言った。


「くそっ! なぜだ! 戦闘母艦はどんなことがあっても一分以内に雷雲のカーテンをかきわけてやってくるのが常識だろう! グリーン! なぜアンドロメダが来てくれないんだ?」


「なに?」

グリーンはチョークで地面に線路を描いて遊んでいる。


「ああああ」

博斗は頭を抱えた。

「ス、スクールファイブの頭脳が幼児化している~!」


「アンドロメダなら、今日は無理よ。車検に出してるんだから」

レッドが言った。

「あんな車が車検通るかっ! くそっ、なんとかならないのか? 時計塔が変形して巨人になるとか、陽光ブリッジと陽光タワーが合体するとか…」


「ごめんさない、博斗さん」

突然ひかりが言った。

「ぎょっ? い、いつからそこにいたんです、ひかりさん?」


ひかりは博斗に答えずに勝手に喋る。

「実は私、博斗さんに私の正体を隠していたのです。私はね、M87星雲から来た宇宙人、イシスなんです!」

ひかりは懐からガーゼつきマスクを取り出して顔にはめた。

「デュワッ!」


見る見るひかりが巨大化し、モチムーと同じ大きさにまでなった。

「デュワァァァァァァッ!」


巨大ひかりは叫びながら、V字に構えた両手の人差し指と中指を額に組み合わせる。

すると緑色の熱線がひかりの額から飛び出し、モチムーを撃った。


「う、うぉぉぉぉっ、こりゃたまらんっ!」

熱線を浴びたモチムーは絶叫すると、あっけなく爆死した。

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