それから一時間ほどしただろうか。

教員室のソファでうとうととしていた博斗は、肩を揺すられて目を覚ました。


「先生、早く起きてください」

「んー?」

博斗は寝ぼけ眼をこすって立ち上がった。


「もうお掃除は終わりましたよ」

遥がにこにこ顔で言った。

「早く、先生も来てください。みんなで闇鍋するんですから!」

「や、闇鍋?」


「やっだなー、先生、忘れたんですか? やるって言ってたじゃないですか」

「そ、そうだったか? 鍋とは言ったが、闇鍋なんて言ったっけかなあ?」


博斗と遥は生徒会室に向かった。

「もう具材も揃ってますからいつでもはじめられますよ」

由布が言う。


「具材って…どんな奴?」

「それは、お楽しみじゃない」

「そ、そうか」

博斗はうなずいた。


「じゃあ、もうはじめていいのか?」

「はいはーい」


博斗は壁のスイッチを押して、部屋の電気を消した。

あっという間に部屋が暗黒に包まれる。


「それでは、具材を入れましょう」

ボチャボチャと次々に色々なものが入る音がする。


「ゴボッゴボッ」

「カチカチカチカチカチカチッ」

「スイッチョン、スイッチョン」

「シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」

「ミギャーーーーッ!」


「お、おい…みんな、なにを入れてるんだ?」

「え、なにが? あ、こら、暴れるな! タマ、もう少しで楽になるから! 気絶すれば痛みは感じなくなる!」


はたして生きてこの闇鍋を終えることが出来るかどうか、博斗は不安になってきた。

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