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博斗は、実験室のドアをくぐった。
桜が実験室に行ってから、かれこれ一時間半。
桜は決して時間にルーズなタイプではない。少なくともなにか連絡ぐらいよこしてもよさそうなものだと思い、博斗は自ら実験室にやってきた。
博斗は黒板の裏手にあるすき間に手を差し入れた。
探ると、堅い手触りがあり、博斗はそのスイッチを押した。
きしみ音一つなく準備室の一面の壁がスライドし、新しい部屋が姿を現した。
博斗は、その「ほんとうの」実験室に足を踏みいれた。
「桜君、いるんだろ?」
だが、部屋には誰もいなかった。
部屋の中央にあるテーブルに、緑色の腕章が置かれている。そのすぐ隣には、桜が使っていたものらしいノートパソコンが置かれている。
博斗は、悪いと思いつつも、ほとんど無意識のうちにノートパソコンの蓋を開けた。
ピポッと音がし、レジューム機能がはたらいて、無機的な画面がすぐに呼び出された。
画面の大部分を地図のウィンドウが占めている。陽光市の地図だ。
地図の、ある地点に赤いカーソルが光っている。
博斗は、はっとした。
「ったく、いったいなに考えてんだあいつは!」
博斗は思わず悪態をつくと、桜の腕章をつかんで実験室を飛び出した。
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