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「なんなのかしらねー、今日は」
ジャケットをテーブルに放り出して、ブラウスだけの姿になっている遥は、ぐでーっとテーブルに顎を乗せていた。
「もう最悪」
翠が、生徒会室の窓をがらっと全開にした。
十二月の冷気が部屋に流れ込んでくる…のではなく、むっとする熱気が部屋に流れ込んできた。
「今朝の天気予報ですが。陽光市だけが異常な暖気に包まれていて、朝五時の段階で気温が三十度を越えているそうです」
「三十度ぉ!? じゃあ今日の陽光市は十二月だってのに真夏ってこと?」
「わたくし、冬服は家においてきましたわ。ムーにも困ったものですわね」
「あ、やっぱりムーだと思う?」
「そう思ったからここに集まっているに決まってるじゃありませんの、間抜け」
「いちいち一言多いのよ、あんた。由布は、なにか感じる?」
「罠の香りがします。おそらく今度も、どこか、すぐわかる場所に怪人がいるに違いないでしょう」
「罠でもなんでも、やるしかないでしょ? 夏は夏らしく、冬は冬らしくが日本の伝統よ!」
由布はくすりと笑った。
「そうですね」
燕は、桜の袖を引っ張った。
「桜ー。あのね、あのね、あついのにね、アイスがないんだよ。アイス売り切れなんだって。ね、桜ぁ? 聞いてる? 聞いてる?」
桜は、もの憂げに、燕の手をほどいた。
「うん…それはたいへんだね」
燕は、ぷぅと頬を膨らました。
「つまんない! 桜のばか!」
言ってしまってから燕は、頭を押さえて身構えた。いつもならここで、桜のハリセンが…。
飛んでこない。
燕はちらっと桜を見たが、桜は、はあっと一息つくと、空中に視線を漂わせている。
「ゆふ~、桜が相手してくれないよ」
燕は由布の顔を覗きこんだ。
「桜さんが…」
由布は、横目で桜の様子を見た。
燕の声を聞いた遥が、うなずいて桜の後ろに寄った。
「そうよ。この前っから、なーんか桜、元気ないのよね。ねえ、なにかあったの?」
遥は、桜の肩に手をおいた。
「別に。なんにもない」
「ねー、さっくらちゃん?」
ぷにぷにと頬を突つく。桜は手を払って拒絶した。
「もう、なによ! 人がせっかく心配してあげてるのに! あたし達仲間じゃない!」
遥は、いーっと歯をむくと、ぷいと桜から離れた。
「まあまあ」
由布は遥をなだめようとしたが、遥はぷんぷんとむくれたまま、そっぽを向いてしまった。
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