8
桜は、率先して腕を突き出し、変身した。
「アームバンド、スクールファイブ、チェンジ!」
「あら、それってなんかかっこいいわね」
遥は目を輝かせた。
「でしょ? やってみ、やってみ」
「OK! アームバンド、チェンジ!」
「まーた、おかしなかけ声増やすんですの~?」
不平を言いながらも、翠も続き、由布と燕は文句を言わずにきっちりと変身を遂げた。
なにせ相手は戦闘員五人。負けるわけがない。
「戦闘員相手だったら、スクールウェーブでも充分なんじゃないかしら?」
レッドは提案した。
「そうだね。無駄に力を消耗するのもなんだし。ひさびさに、それでもいいんじゃない」
特に異議はなく、五人はV字に整列し直すと、両手をバッと頭上に突き上げた。
増幅されたエネルギーがそれぞれの手の間に集まる。空気がゆらりと揺らぎ、耳鳴りのような共鳴が響き始める。
「スクール、ウェーブ!」
五人は手を頭上から振り下ろし、正面の五人の戦闘員に向けて突き出した。
放たれることを待ち焦がれていたエネルギーの波が、五列に並んでどっと流れだす。
「どぉぉぉぉぉっ!」
だみ声とともに、頭上から、青っぽい影が飛び降りてきたかと思うと、スクールウェーブと戦闘員との間に、ひょっこり立った。
青いポリバケツに、にょっきり生えた手足。
「怪人!?」
ブラックが叫んだ。
「飛んで火に入る夏の虫だわ! このまま、いっちゃえ!」
レッドは、構わずスクールウェーブを続け、四人もそれに倣う。
怪人は、自分の胴体よりは若干小さいポリバケツを小脇に抱えていたが、その蓋を外し、ぐいと突き出した。
「この瞬間を待っていた! ムーエネルギー、分別ぅぅぅぅ、収集ぅぅぅぅっ!」
五列きれいに並んで放たれていたスクールウェーブの波が、大きく歪んだ。
ぐっと、雑巾でも絞るかのように五色の光がねじれ、入り乱れ、のたうって収束し、怪人の持つポリバケツに吸い込まれた。
「なにっ?」
ポリバケツは、まるで底無しのように、スクールファイブから送り出されているスクールウェーブのエネルギーをぐんぐんと吸い込んでいる。
その直前で五色の光が飛び散っていて、さながら万華鏡のように美しい光景となっている。
「みんな、スクールウェーブを止めるんだ! このままじゃ怪人にエネルギーを吸い取られるだけだ!」
呼びかけながら、グリーンは、いち早くエネルギーの流れを止めた。
怪人は、素早くポリバケツに蓋をした。
「うへへえ、大漁、大漁。ピラコチャ、ばっちりエネルギーを頂いたぜ!」
怪人が高笑いすると、それに応えるように、ピラコチャが路上に忽然と姿を現した。
「よくやった、ゴミムー!」
ピラコチャは、怪人から、スクールウェーブのエネルギーの詰め込まれたポリバケツを受け取り、大笑いした。
「ざまあないな、スクールファイブ! お前達のエネルギー、たっぷりと借りていくぜ! 戻るぞゴミムー!」
進み出ようとした五人の前に、戦闘員が、なにやら缶を投げつけた。
缶は地面に当たると、しゅーっと白い煙を吹き出した。たちまち視界が失われ、真っ白な世界が広がるばかりになった。
煙が消えたときには、ピラコチャも、怪人も、戦闘員も、完全に姿を消していた。
ただ、戦闘員の放り投げた空缶が転がっているばかり。
「くそっ! ムーの作戦だったんだ! 僕らのエネルギーを盗むための!」
「わたくし達のエネルギーを奪われてしまったのですの?」
「わたし達を誘い込んで、わざとスクールウェーブを使わせた。なぜさらに攻撃せずに逃げたの…? なにか、企んでいる…?」
ブラックは顎に手を当てて考えこんだ。
「悔しいっ!」
レッドは、煙を吹き出した空缶を、思いっきり蹴飛ばした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます