風呂上がりのぽかぽかした体で、遥は、腰に手を当ててぐびぐびと一気に瓶の中身を飲み干した。

「ぶはぁぁぁぁぁぁっ! やっぱ風呂上がりはコーヒー牛乳よね。ほら、翠も今日はやんなさいよ」


翠は、風呂上がりの乳飲料がなぜか妙にいけることを昨日はじめて知ったのだが、遥のように豪快に飲むのはとてもプライドが許さず、ソファにつつましく腰掛けて、いちごミルクをちびちびと飲んでいた。


「ねえ、桜、なにおこってるの?」

燕は、桜の顔を覗きこんだ。


「怒ってないよ」

桜はぷいと顔をそむける。

「やっぱおこってるでしょ?」

燕は、間をおいてから、フェイント気味にひょいと桜と向かい合った。


「怒ってるんじゃなくて恥ずかしいんだよ!」

桜はぽかりと燕の頭を殴った。

「っれほど泳ぐなって言ったのに、どうして泳ぐのさぁ。みんな他人のふりしてるし」


「すみません。わたし、そのとき髪を洗っていました」

横にいた由布がうつむいた。


「そうそう。遥は気泡風呂のほうに逃げるし、翠はサウナに逃げるし…ああ、もう、いい友達に恵まれたよ」

「だって、おふろ広いから、およぐとたのしいよ」


「楽しいとかそういうのじゃないの。タオルもったまんま湯船に入るし…もう、燕は銭湯のわびさびってもんが理解できてないよ」

「あはははは。ごめん」


「まあ、いいや。燕の謝り顔は免罪符だね」

「めんざい…なに?」

「なんでもない。さあ、ご飯食べに行こう」


「ご、ごはん…。じゅるじゅる。いこう、いこう!」

燕は、ぴょこっと飛びあがると、いち早く松の湯から外に出た。

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