第二十五話「有線より愛をこめて」騒音怪人スピカムー登場
第二十五話「有線より愛をこめて」 1
日が暮れてしばらくが経った。
賑やかだった校内も少しずつ静かになり、いまはまばらにトンカンと板を叩く音や笑い声が聞こえるほどになった。
校門から、連れ立った生徒達が次々と帰っていく。
陽光祭の一日目は終わろうとしていた。
ひとまず、ムーの攻撃の第一弾は退けることが出来た。だが、これで終わるとは思えない。むしろ、これからではないのか。
博斗は、校門から出て行く生徒達を眺めながら、険しい顔で考えていた。
「どうしました、博斗さん?」
気がつくと、ひかりが横に立っていた。
「たぶん、シータは、また攻撃してくるんでしょうね。あいつには、こんなイベントの意味とか、そんなの、わからないに違いない。ただ、人が集まって雑然とした状況になれば、攻撃がしかけやすい、そんなことしか考えてないんでしょう」
「そうでしょうか?」
「そうに決まってます。あいつは、アイスウーマンだ。俺ははじめ、シータはけっこう人間らしい奴かと思ってましたけど…そうじゃなかった。あいつは、どんなことでも戦うための道具に出来る卑劣な奴なんだ。あいつには、人間らしい心なんてないんだ」
ひかりは、寂しそうに小さく首を振った。
「そうでしょうか…?」
「そうです。そうとしか思えない」
「ただ、不器用なだけかもしれませんよ」
「不器用?」
「自分の心を、どう表現すればいいのか、わからないだけかもしれません」
「そうかなあ?」
博斗は考えこんだ。考えれば考えるほど、あの仮面を剥がしてやりたくなる。
ほんとうに心があるんなら、まず目と目をあわせて話をするべきだ。
あの仮面をしている時点で、もう、シータは心を失っているはずだ。
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