授業が終わると、桜がどうこうしようとするより早く、博斗が桜をつかまえた。


「あー。さっきのはごめんってば」

桜は苦笑いした。


「いや、それはいいんだけどさ、それより桜君、ちょっと疲れてないか?」

「え?」

「いや、ちょっと頬がこけてるような気がするし、髪もぼさぼさだし…。眼鏡とってみな。クマがあるんじゃないか?」


「め、眼鏡はいいよ。僕は眼鏡をとると変身が解除されるから」

「嘘つけ」


「いや、うん。嘘だけどさ。眼鏡は、取るのヤなんだよ」

「ま、ちょっと心配だったからさ」


「…うん。確かにちょっと疲れてる。クラブ企画で、けっこう追いこまれてたから」

桜はうなずいた。


「そっか」

博斗は、にこりと笑った。

「ま、ほどほどにな。趣味もなにも大事だけど、体が資本だぞ」

「うん、わかってる」


「特に、桜君は女の子なんだからな。可愛くしてたほうが俺はうれしい。じゃあ、放課後な」

言い残し、博斗はすたすたと去っていった。


「あ…」

桜は、目を伏せた。

…はあ。


やっぱり、そうだよね。可愛いほうが、いいよね。

そりゃ、そうだよね。

桜は、小さくため息をついた。

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