13
博斗は拍子抜けしたような、ほっとしたような、ふわふわと浮いたような気分だった。
ほとんどちゃんとした言葉になっていなかったが、自分が言いたかったことが、言えた気がする。
「あの…」
博斗は気付いた。博斗はまだ、ブラックの腰をしっかりと抱き寄せたままだったのだ。
「…す、すまん!」
博斗は慌ててブラックから手を放し、しゃんと立たせた。
「いえ…。ありがとうございます。わたしはまだ、やっぱり、駄目なときがあるようです」
「そうでいいんだよ。人間ってのは弱い生き物さ。俺だって、ちょっと前までけっこうブルーだったんだ。それが、君のおかげで、答えを見つけられた気がする」
「わたしのおかけで…?」
「ああ。そうさ」
「…」
「いいんだよ。穢れがあっても。穢れがあるから、その人のハレがより引き立つ。君に陰があるから、君の魅力がよく見えるんだ」
「…」
「いってきな。仲間のところへ。いまの君を包んでくれるみんなのところへ」
「はい」
ブラックは深く頭を下げると、クラゲムーと戦いを繰り広げている四人のほうを向いた。
様子を見ながらペンを飛ばしてクラゲムーを牽制していたグリーンの元に、ブラックが降り立った。
「状況は…?」
「よろしくない。色々考えたけど、クラゲムーには、一発いきなりスクールフラッグをかますのがいちばんだと思う。フラッグで密閉して止めを刺せるから」
レッドは旗竿を地面に突き立てた。
「オッケー!」
グリーンが親指でサインを出した。四人がフラッグの四隅を持ち、息一つ乱さずぴったりとタイミングを合わせてフラッグを広げた。
「スクールフラッグ、レディー、ゴー!」
クラゲムーは、脱出できることを確信しているのであろう、スクールフラッグをよけようともしなかった。
フラッグはクラゲムーに正面からべたりと貼りついた。
クラゲムーは、すぐさまぬるぬると身をうねらせ、フラッグから逃げ道を確保しようとした。
が、四人の腕の動きはそれより早く、フラッグを巾着状に形作り、クラゲムーが逃げ出すことのできないように口をしっかりと絞り上げてしまった。
こうなると、クラゲムーの軟性の体は逆に仇となった。クラゲムーが内側からなにをしようとしてもフラッグは、形を変えるだけでびくともしない。
「とどめを!」
ブラックがレッドを見た。
旗竿が輝きに包まれながらうなりをあげて飛び、フラッグに捕捉されたクラゲムーの体を貫いた。
「完璧!」
レッドはガッツポーズした。
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