第二十一話「禁じられた事は」 怨念怪人ヒョウシキムー登場

第二十一話「禁じられた事は」 1

都市には車があふれている。

なんとも無骨な文明だ。…いまだに移動手段を物質に頼っているとは。


道路をわがもの顔で往来するその存在に慣れるまで、しばらく時間がかかった。

なにしろ、歩行者のほうが明らかに弱者であるはずだというのに、自動車は平然と歩行者を邪魔物扱いする。

実に面白い。これでよくぞ福祉社会などという大義を振りかざすことができたものである。


シータは、いまでも、つい、自動車などない頃の感覚で車道を歩いてしまい、クラクションを鳴らされることがしばしばある。

そのたびに、思わず車を破壊してやろうかという衝動にかられるのだが、さいわい、シータの自制心はピラコチャのように脆くはなく、衝動は、退屈な白昼夢となって消える。


だが、こんな状況が不愉快であることに変わりはない。

自然は、汚すためにあるのではない。

我々の文明は自然を汚さなかった。いまの地上文明は、自然を死に導いている。


それだけでも、地上文明が滅びるべき理由として充分ではないか?

この星を救うためには、この地上文明を、なんとしても滅ぼさなければならない。


そして再び、我々の文明世界を構築しなければならない。

シータはくり返し自分に言い聞かせた。それでよいはずだ。それが私の行動する目的なのだから。


ピラコチャやホルスや…総帥は、ほんとうに私と同じ理想を抱いているのだろうか?

このところの私は、どうしたのだろう?

心に迷いが生じている。

まったく、面白くない。

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