二限の終わりを告げるチャイムが鳴った。

泥のように眠り込んでいた燕は、そのチャイムの音が目覚まし時計であるかのように、がばっと顔をあげた。


「おはよう、眠り姫ちゃん」

クラスメートが笑いながら声をかけてきた。

「燕ちゃん、結局、ずっと寝てたのね?」

「????」


「…あきれた。変だったのよ、一時間目」

「なにが?」

燕は聞き返した。


クラスメートは、苦笑した。

「燕ちゃんだけじゃなくてね、みんな眠っちゃったのよ」

「眠る?」

「よくわかんないけど。急に眠くなって。聞いてみたら先生も眠っちゃったって」

「ふ~ん」


「ま、燕ちゃんには関係ないね。ずっと眠りっぱなしだったんだから」

「うん」

燕はにこにことほほ笑んだ。

「あ~あ、うらやましいな、その性格。たぶん燕ちゃん、世界の終わりが来ても眠ってるんじゃない?」


「ふぁぁぁぁぁ。…ごはん食べる」

言うと、燕は勢いよく教室を飛び出した。


後に残された生徒達が、何人か、空っぽになった燕の机のまわりに集まった。

「どうしても信じられないよね」

「うん。選挙やりなおしてほしいね」

「あんな子が、生徒会なんて、ねえ」

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