博斗は、シータのことを考えた。

ときどき、好きで戦っているように見えないときがあるかと思えば、戦いを楽しんでいるように見えるときもある。あの仮面を剥がすことができれば、シータとは、わかりあえる気がする。


ひかりは自らの手で、自分の体を抱きしめていた。

戦いが進めば進むほど、次第に、つらくなってくる。

自分で招いた道だとわかっていても、覚悟はしていたはずだとわかってはいても、つらい。


遥は拳を握ったり、開いたり、ずっと考えていた。

陽光祭。たった、三日間の、知らない人から見れば、ただの学園祭なんだろうけど…。

あたしは、ちゃんとリーダーとして、みんなを引っ張って、頑張る。

これで、いいんだよ。あたしは、望さんとは違うもの。自分の信じた道で、まっすぐいく。


翠は、最近の自分の感情がよくわからずに、戸惑っていた。

誰よりも、常に上に立つことがわたくしの義務ではなかったの?

そのためには、こんな感情は、ほしくない。でも…。


由布は心を落ち着かせていた。

わたしのいる場所は、確かにここにある。みんながわたしを守ってくれる。

過去はまだわたしのなかにあるけれど、大丈夫…少しずつ、よくなっているから。


燕は考えていた。

今日のご飯はなににしよっかな? たたかうと、おなかがへるんだよ。

つばめは、体をうごかすしかできないもの。みんなのために、がんばるしか、できないもの。だから、いっぱい食べて元気をつけないとね!


桜はまだ迷っていた。

いきすぎた科学は身を滅ぼす。そんなことは、わかってる。でも、いまの僕たちには、その、いきすぎた力が必要だ。

毒をもって毒を制す。ムーの超兵器にはムーの力を継ぐ超兵器で立ち向かうしかない。

…でも。


博斗は、大きく伸びをすると、一同に振り返った。

「とにかく、花火も終わったことだし、今日のところは、撤収だ。楽しい二学期が待ってるぜ?」


大股で歩き出した博斗に続くようにして、ひかりと五人がめいめいのペースで歩き始めた。


こうして、陽光生徒会の夏は、終わりを告げた。

それぞれの心に、様々な想いを残して。

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