13

博斗は、陽光学園の校門をくぐった。抜け道を使い、司令室に降りてみた。


五人がいる。ひかりと、理事長も。

比較的軽傷の由布と桜は、やや負傷の遥と翠をそれぞれ診ており、かなりの手傷を負った燕が、ひかりに診られている。


博斗が降りてきたことに気付いた理事長が、博斗に、手の平にのっている黒ずんだ棒を見せた。

「よく無事だったな。だが、さすがにこっぴどく壊れたようでな。これは当分使い物にならんぞ」


「はあ。あのー、彼女達はどうしてここに?」

「私と酒々井君が見にいって、倒れている彼女達と、落ちていたこれを見つけて運んだんだよ」

「そ、それって、俺の立場は?」


「何を言っているんですか博斗さん。私達が行ったときには、もう博斗さんいなかったじゃありませんか」

「へ?」


博斗は腕を組み、顎に手を当てた。

ひかりさん達がきたときには俺はもう現場にいなかった。

稲穂が俺を助けたときには、五人はもう現場にいなかった。

…ああ、わけわからん。


「それより、瀬谷君」

「はい?」

「彼女達と君に、至急の課題が出来た」

「はい。わかってます」


「いつ、次の怪人が現れるかもわからん。早急に、新必殺技を完成させるんだ。今回はたまたま君の力でなんとかなったが、この武器は、もう当分は使えないのだからな」


「ええ。…きっと、すごい奴を考えてみせますよ」

博斗は五人を見ながら言った。

「みんな、スクールウェーブが破られて、残念かもしれないが…」


「ぜんっぜんっ! 残念とかそれどころじゃないです! あたし、頭にきてます! 絶対見返してやるんだから!」


「博斗さん」

燕の手当てを終えたひかりが、博斗に寄った。

「ご立派な戦いぶりでした」


「よしてくださいよ。俺は、何も考えずに突っ込んだだけです」

「爆発の瞬間、まぶしすぎて、様子がつかめなくなりました。ほんとうに、あんな危険も顧みずに、よく…」

ひかりは博斗の手を握った。


「き、危険といっても…顧みなかったんじゃなくて、気付かなかっただけですって」

「ふふ。いつもその調子で、いてくださいね。己の力を過信せず、おごらず…」


「わかってますって。俺は、臆病もんですから」

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