玉次郎を連れて大人用プールの入り口にやってきた桜と翠は、混乱を目の当たりにして思わず立ち止まった。


プールの水は渦巻き、逃げ遅れた人達を吸い込んで、まるで洗濯機のように轟々と轟いている。

シャワーや洗面台から激しい勢いで水が噴き出し、もはや手がつけられない状態だ。


プールサイドで、戦闘員と戦っている赤と青の姿が見える。


桜は翠と目を交わした。

「いい、ここにじっとしてるんだよ、たまちゃん。…ちょっとトイレ!」

桜は玉次郎に叫ぶと、とっと飛び出した。


「わ、わたくしも!」

翠が慌てて続く。


いざスクールファイブに変身すべく、トイレに飛び込もうとしたところで、桜は急ブレーキをかけて停止した。


その背中に翠が突っ込み、胸の弾力で弾かれた。

「衝突安全バディですわ…ところで、急に止まってどうなさいまして? すぐ変身しなければいけませんわよ?」


「来る場所間違えた。早く更衣室に戻らなきゃ。腕章は鞄の中だよ」

桜は、自分のむき出しの肩を示した。

「あら、そうですわね。すっかり忘れていましたわ!」


その二人の正面に、由布が駆け込んできた。

「これを!」

由布は腕章を二人に投げる。


「あら! さすが、ですわね」

「さ、早く!」

由布は二人をトイレに押し込み、自分も続いた。

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