8
玉次郎を連れて大人用プールの入り口にやってきた桜と翠は、混乱を目の当たりにして思わず立ち止まった。
プールの水は渦巻き、逃げ遅れた人達を吸い込んで、まるで洗濯機のように轟々と轟いている。
シャワーや洗面台から激しい勢いで水が噴き出し、もはや手がつけられない状態だ。
プールサイドで、戦闘員と戦っている赤と青の姿が見える。
桜は翠と目を交わした。
「いい、ここにじっとしてるんだよ、たまちゃん。…ちょっとトイレ!」
桜は玉次郎に叫ぶと、とっと飛び出した。
「わ、わたくしも!」
翠が慌てて続く。
いざスクールファイブに変身すべく、トイレに飛び込もうとしたところで、桜は急ブレーキをかけて停止した。
その背中に翠が突っ込み、胸の弾力で弾かれた。
「衝突安全バディですわ…ところで、急に止まってどうなさいまして? すぐ変身しなければいけませんわよ?」
「来る場所間違えた。早く更衣室に戻らなきゃ。腕章は鞄の中だよ」
桜は、自分のむき出しの肩を示した。
「あら、そうですわね。すっかり忘れていましたわ!」
その二人の正面に、由布が駆け込んできた。
「これを!」
由布は腕章を二人に投げる。
「あら! さすが、ですわね」
「さ、早く!」
由布は二人をトイレに押し込み、自分も続いた。
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