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「んで、たまちゃんはあの子が好きで、一緒に泳ぎたいのね?」
「す、すすすすすすす好き? ち、ちちち違う、ち、ち、ち、違うよ!」
玉次郎は真っ赤になってうつむいた。
「なんてわかりやすい反応だ」
「あたしね、ああいうタイプの女、よく知ってるけど、…やめたほうがいいわよ。将来ろくでもない女になるから。絶対、苦労するわよ」
「なぜわたくしを見て喋るのですかしら?」
翠は首を傾げた。
「まあ、いいじゃないか。恋愛に理由なんてないんだから。好きになったら、もう好きになってるんだよ。…な? 玉次郎?」
博斗は玉次郎の頭に手を置いた。
「おじ…にーさん、なんか、けいけんゆたかってかんじだね」
「当たり前だ。俺はこれでも昔は…」
博斗は言葉を切った。興味津々といった顔で、遥や桜が博斗を見ている。
「…昔は?」
「ごほっ、ごほっ、む、昔は…そう、昔は俺だって泳げなかったんだ! お前、泳げないんだろ? そんなら、泳げるようになればいいじゃないか? んで、見返してやればいいだろ?」
「そ、そんなのムリだよ。僕、ぜったい泳げない」
「なんだ? やる前からあきらめてるのか? 特訓はしてみたのか?」
桜が飛び出し、ためらっている玉次郎の両手をつかんだ。
「そういうことなら、話は早い! うんうん。僕がたまちゃんに泳ぎを教えてあげようじゃないか!」
「お姉ちゃん、おせんべいみたい。…僕、あっちのナイスバディなお姉ちゃんがいいな」
玉次郎は桜に背を向けると、翠を指差した。
「お、お、お、おせんべい? …こ、この、毛も生えてない青ガキの分際で…!」
「や、やめなさいよ、桜。大人げないんだから。…ふ、ふふ。お、おせんべい。あ、あははは」
「おせんべいって言うな~!」
桜は遥に唾を飛ばした。
「たまちゃんって言ったぶんのお返しだよ」
玉次郎がぼそりと言った。
博斗は唸った。こ、このガキ…できる!
「ふふ、ふふふふ。おほほほほほ。おせんべい。くくくく。ほほほほほ。ほーほほほほほっ!」
「翠、笑い過ぎ」
「だって、お、おせんべい…ふふ、ほほほっ…ほっ?」
翠の肉感的な太モモに、小さな手が這っていた。
「お姉ちゃ~ん~」
玉次郎は頬を翠の太モモにすり寄せていた。
「このマセガキぃっ!」
翠のキックが玉次郎に炸裂した。
「あう~っ! お姉様、もっとお!」
謎の悲鳴とともに玉次郎は転がった。
「どこであんな言葉覚えたのかしら。なーんか、たまちゃんって、誰かに似てるのよね」
「まったく、このわたくしの高貴な肉体に触れるとは、末恐ろしいガキですわ。わたくしの体は、未来のわたくしの夫となるべき方のために、汚れ一つなく維持されているのですわよ」
「そうだ! この太モモは俺のもんだ!」
「…」
「あ、あれ? どうしたのかな~、翠君…東大寺南大門仁王像みたいな怖い顔して…は、ははは」
「こ、この、変態教師!」
翠のキックが博斗に炸裂した。
「こ、これは! …痛いけど…いいかもしれない…」
博斗は謎の叫びとともに転がった。
「博斗先生と玉次郎君って…似てますよね」
由布が遥の耳元でささやいた。
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