ブラックは、この突然の強風にも冷静さを失わなかった。


次から次へと押し寄せる戦闘員に、ブルー、グリーンとの連携を分断され、苦戦を強いられていたブラックにとって、戦闘員達が浮き足立ったこの隙は決定的なチャンスだった。

「ブルーっ、グリーンっ!」


ブラックの声に、ブルーとグリーンが合流した。

「なんだろうね、いったい?」

「それを追求するのは後でも遅くありません。いまは、戦闘員を一掃するチャンスです」


「わかってるって。そうだなあ…」

グリーンはちらりとあたりを見渡した。戦闘員はあらゆるところに散らばっている。


グリーンはブラックとブルーに耳打ちした。

「できるよね?」

「簡単なことです」

三人は両手を大きく広げて頭上に突き出した。


「拡散スクールウェーブ!」

三人の掲げた三十本の指から、細い光が放たれた。

黒い筋、青い筋、緑の筋それぞれが、弾けるように分散し、美しい軌跡を残しながら、四方に飛んでいく。


光は鋭い矢となって、戸惑っている戦闘員達を撃った。撃たれた戦闘員はみな地面に倒れ、雨にうたれるままとなった。


「ぐずぐすしている暇はありません。レッドとイエローを助けないと!」

ブラックは二人が飛ばされたほうを指差し、すぐに五人は合流した。


「怪人二人、まとめてスクールウェーブで倒しちゃおう!」

グリーンが叫んだ。


「異議なし!」

レッドがすぐに応え、大きく踏み出した。

その斜め後ろにイエローとブラックがぴたりとつき、さらにその後ろにブルーとグリーンがつく。


五人の体がそれぞれの色に輝き、全身から放たれた五色のうねりがダブルタイムーンにせまる。


「我らの愛は無敵だ! スカイラブ・ハリケーム!」

タイムーンから放たれた激しい渦が、スクールウェーブに正面から立ち向かう。


スクールウェーブとスカイラブ・ハリケームが激しく衝突し、爆発を起こした。

風の渦と光の波動が絡み合い、そしてお互いに砕け散った。


「そんな…」

レッドは荒い息をつき、イエローは、がっくりとその場で膝をついた。ブラックは無言で、無傷の怪人達を見据えた。ブルーはまだ事態をよくのみこめず、ぽかんとしている。グリーンは舌打ちした。


「うわっはははははっ!」

サイクロムの高らかな笑いが森を揺らした。

「スクールウェーブ、敗れたり!」


「私達の愛は、1+1以上の力を生むのよ。お前達のような、寄せ集めの五人以上の力をね。そこの二人!」


とハリケームはレッドとイエローを指差した。


「お前達が、ひび割れの原因のようだねえ」

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