第十二話「翠の恐怖」 避暑怪人ネットムー登場

第十二話「翠の恐怖」 1

陽光市は今日も暑い。


博斗はいつものように、陽光学園の門の前にやってきた。

いつもと違うのは、道にも、校内にも、ほとんど生徒がいる様子のないこと。


それはそうだ。何が好きで休みの日にまで学校に来る生徒がいるだろうか。

いるとすれば、部活の生徒達ぐらいだろう。


博斗はひんやりとした校舎に入った。はあ~。極楽。


ずいぶん俺も堕落したものだと博斗は思う。

いや、人間自体が堕落したのか。

「暑さ」というものに対する、人間の生物としての抵抗力は確実に低下している。


人間という生き物が変化しているのだろう。

クーラーという文明の利器なしに生活が出来なくなりつつあること、それが進化か退化か。


博斗はふっと思う。現代の人類の文明は、なんとも無骨なものだと思う。

それに比較して、ムーの文明は、なんと洗練されたものだろうか。


ムーの文明は、現代の文明のように、地球を汚染したり、傷つけたりといった痕跡をほとんど残していない。


現代を超える水準の技術を持ちながら、エネルギーの浪費をした様子もない。

いったい、どんなエネルギーを使用した文明だったのだろうか。


ムーの人間達も、すべてがすべて悪というわけではなかったろう。

現に、元々スクールファイブだった者達や、博斗のご先祖様やらがいたわけだから。


ムーという存在自体は、絶対的な悪とは言い切れないのではないか。

それを言い出すならば、現代の博斗達の文明にも、撲滅すべき悪はいくらでも存在しているわけだ。


ムーの悪だけを叩き、その文明の価値だけを再び享受することはできないものだろうか。

それとも、ムーの文明は必然的にあのような野望を育み、本質からして不可分なものなのだろうか。


最近は、どうも忙しさにかまけて、ムー文明のことをあまり調べていなかった気がする。

なぜ先進の文明を誇ったムーが滅んだのか。

そして、ムーにはどれほどの力があったのか。


スクールファイブの戦いのためにも、それを調べることは決して無駄足にはならないだろう。

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