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博斗、ひかり、理事長の三人は、生徒会の五人を司令室に休ませ、自分達はその奥の小部屋にいた。
「瀬谷君」
はじめに口を開いたのは、理事長であった。
「なにか、言うことはあるかね?」
「申し訳ありません。事前に警告されていたにも関わらず、何の打つ手もなく、彼女たちを傷つけてしまいました。…すべて、俺のせいです」
「瀬谷君。謝って事態が改善されるのならば、いくらでも謝ってくれたまえ。…それに、謝る相手を間違えている」
「わかっています。きちんと、俺から彼女たちに、謝りたいです」
「それで? 謝って終わりかね?」
「いや。このまま引き下がったりしないですよ、俺は。…体育祭をこんなにされて、黙ってられますか? なんとかして、奴等に一泡吹かせてやりたいですよ!」
「それを聞いて安心した。君が戦意を喪失しては戦いにならんからな」
理事長は葉巻を置くと、博斗の肩に手を置いた。
「瀬谷君、彼女たちは、傷ついている今こそ、君の助けを必要としている。…戦いだけではなく、体育祭の準備でも、常に彼女たちと苦楽をともにしてきた君だけが、再び彼女たちを勇気づけることが出来る」
「俺に、できるか?」
博斗は、自分に確かめるように呟いた。
「いや、やらなきゃいけないんだ。俺は、彼女たちの泣き顔やつらい顔は、見たくない。俺は、彼女たちの笑顔がみたいから、彼女たちと一緒に戦っているんだ」
理事長は深く肯くと、博斗の肩を叩いた。
「いずれにせよ、何らかの行動を起こす必要がある」
「まさかパンドラキーを渡したりはしませんよね?」
「もちろん、そんなつもりはない。考えようではないか」
「あの子達が敗れたのは、変身できない状況にあったためですね」
ひかりが口を挟んだ。
「ええ、そうです。他の生徒達の目が全て集中していた。パンドラキーと、彼女たち自身の安全のために、スクールファイブの正体を知られてはならないということでしたから…」
博斗は、顎に手をあて考えた。
「問題は、どうやって変身するか。司令室で変身すれば、ムーの連中には正体を知られずに済むだろうけど、五人の生徒がグラウンドから消えて、代わりに五人の戦士が出てくれば、それだけで陽光学園の生徒達には正体をバラしているようなものだし…」
「ムー幹部のなかでは、スクールファイブの正体を気遣う必要が有りそうなのは、ホルスだけですね」
「ホルス? 誰だい?」
「あ、ええ、あの、三人目の幹部です。ピラコチャは、すでに何度かスクールファイブの変身を見ているはずですが、おそらく彼の頭脳はその記憶をとどめていないでしょう。シータ参謀は、間違いなくスクールファイブの正体を知っていて、あえて手を出してこないような…。それだけに、今回のシータのやり方は許せません。よりによってこのときを狙ってくるとは…」
「するとムー側の問題は、ホルスという、あの長身の男だな。見たところ科学者のようだが…」
「そうです。ムーきっての科学者であり、狂気と倒錯に支配された男。おそらく、合成怪人の製造も彼が行っているはずです」
博斗は指を二本、突き出した。
「こっち側の問題は二つ。どうやって生徒達に正体を知られないように変身するか。第二に、人質としてとられている生徒達をどうするか」
「体育祭という条件を、逆に有利に使いましょうか」
「どういうことです?」
「変身と、人質と、その両方を解決できる方法が、あるかもしれません」
「ほんとですか? どんな?」
ひかりは、博斗と理事長に、かいつまんで説明を始めた。
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