翌日、午前中の授業を終えた博斗は、体育館に向かった。


すでに遥と桜がステージにおり、マイクテストに余念がない。

「おっす、準備はぼちぼちかい?」

「はい、もう、あとは本番だけですよっ」


時計は、ちょうど一時を回ろうとしていた。

生徒総会は一時半の開始予定である。すでに、ぽつりぽつりとではあるが、体育館にやってくる生徒の姿も見える。


遥がそのなかから見知った顔を見つけた。

「やっほ、稲穂!」

「遥さん、緊張してます?」

「ぜんっぜん! だって、みんなの前に立って話ができるんだもの、わくわくしちゃって、緊張なんかしてらんないわよ!」


「うーん、普通、人前に出ると緊張するものだと思うけどね。遥君は逆なんだな」

「うらやましいです」

稲穂がこぼした。


一時半を告げるチャイムがなった。

司会の翠がマイクを構え、開会を宣言すると、ざわついていた体育館が静まった。


こうして、生徒総会が始まり、プログラムは滞りなく進行していった。


「無事、終わりそうだな」

博斗はかたわらのひかりに声をかけた。


だが、ひかりは厳しい表情のまま、体育館の生徒達を見つめている。


「ひかりさん?」

「はたして、このまま終わるでしょうか?」

「え? どういう意味だい?」

「なんとなく、嫌な予感がするのです。私、司令室に戻ってみます」

ムー人の予感というヤツだろうか。馬鹿には出来ない。


「分かった。ここは俺が」

「はい。お気を付けて。私の声はトランシーバーで送ります」

ひかりは駆け足で体育館を出ていった。


いっぽう、ステージの裏では、自分の仕事を終えた遥が、これから出番となる桜と手を叩き合っていた。

「タッチ! 頑張って、桜」

「はいはい」


遥よりもかなり背の低い桜が、マイクを自分の背に合わせて傾ける。


そのとき、博斗のトランシーバーからひかりが叫んだ。

「います!」

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