第二話「ひとりぼっちの転入生」 基盤怪人ボードムー登場
第二話「ひとりぼっちの転入生」 1
南太平洋の小さな島、イツア島。
その沖の海底に、人知れずムー帝国の本拠地である遺跡はあった。
その海底遺跡の中心部にて、四人の幹部達が、パンドラキーの前に立ちふさがった仇敵にいかに立ち向かうか、議論を続けていた。
「奴等はたったの五人だぞ! ありったけの怪人と戦闘員を使って、一気に叩けばいいんだ!」
ピラコチャはどすどすと歩き回りながら、同じ言葉を繰り返した。
「怪人を創るのはこの僕ですよ。いまのムーのエネルギーでは、とても同時に大量の怪人を創ることは出来ませんね」
と、外套に頭まで包んだ長身の男がいった。ムー帝国きっての科学者、ホルスである。
「プロフェッサー・ホルス。具体的には、どの程度までなら可能なのだ?」
僧衣に冠をかぶった男が、ホルスに尋ねた。
この男こそ、沈没以前のムー最後の総帥であり、そしてよみがえったムー帝国最初の総帥、マヌである。
「せいぜい三匹。怪人一体ずつの強さを重視するなら、やはり一度に一体が限界かと」
「総攻撃は難しいということか。何か考えがあるようだな、シータ参謀?」
「はい。なぜ一万年を経たいまも、我々の前に立ちはだかるのか。連中がパンドラキーを保持しているのかどうかなど、我々には何一つわかっておりません。まず連中のデータを集めるのが先決かと」
「僕はシータに賛成するね。それなら、そうそう無茶なペースで怪人を創る必要もないわけだし」
「俺はそんなまだるっこしいことなんかやってられねえ。がつーんと一発やっちまえばいいんだ! 総帥の結論はどっちなんだ?」
「私の結論はその両方だ。シータ、お前はスクールファイブを牽制しつつ、パンドラキーを引き続き探索するのだ」
「はい、総帥」
「ピラコチャ、お前は正面からスクールファイブに挑むがよい。幸い、現在の地球文明は様々な道具を生産しており、怪人の材料には事欠かん」
「いい判断だぜ、総帥」
「そして、プロフェッサー・ホルスはシータおよびピラコチャのため、合成怪人と戦闘員を生産し続けるのだ」
「ま、適当にやらせてもらいますよ」
「ピラコチャ、くれぐれも私の邪魔はするな」
とシータ。
「それはこっちのセリフだぜ」
「よいな、イシスの失踪は痛手だ。お前達にはこれまで以上の負担を強いるだろう。心せよ」
「おい、ホルス。妹の分もしっかりやれよ」
「…まったく、あの馬鹿女が突然消えたりするから、兄である僕にしわ寄せが来るんです」
「イシスか…いったいどこにいったのだろうな」
とシータはひとりごちた。
狂人だらけの幹部のなかにあって、唯一良識をもつ賢者であった。頭の回転はずば抜けて速く、兄であるホルスと似て冷静沈着であり、しかし兄とは対照的に人望もあった。
だがイシスは、シータらが目覚めたときにはすでに姿を消してしまっていた。なんの手がかりも残さずに、いなくなっていたのだ。
仲間としてというより一人の友人として、シータは再びイシスに会いたかった。
シータは心のなかに、イシスの行方を捜すことも、自分の目的に加えていた。
それにしても、とシータは考えた。あの五人の戦士達は、少し違うようだがかつてと同じような輝きに包まれた出で立ちだった。
我々のように、一万年前から眠り続けていたのだろうか。それとも、まったく新しい戦士が、我々の復活を阻止しようとしているのだろうか。
シータは早速、ホルスに注文を出した。
「変わったものを頼むのですね?」
「無理か?」
「いや、僕に創れないものは時間だけですよ」
「では、急ぎで頼む。出来次第、私は行動に移る」
「そうですね、二時間もあれば充分でしょう」
「そうか。…ピラコチャ、私が戻るまでその辺りの床で寝ているんだな。しばらくは、私がやらせてもらう」
シータは自室に向かった。行動の準備をしなければ。
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