3-3 摩天楼 ー Skyscraper

「摩天楼ってやつを最初に考えた人間は神様になりたかったのか、そうじゃなきゃ大馬鹿野郎だな」


 六本木地区に聳える摩天楼、"Freedom"の最下層でアームドスーツTorgielに乗ったトワは呟く。Torgielはアームドスーツの中で数少ない飛行性能を持つ機体だ。小回りは効くが出力が限られているため高速飛行も長時間飛行もできない。しかしそれでも摩天楼の外壁を登る上では、落下の危険性がなくなるためはるかに心強い。

 BlueIslandが欧米政府関係要人の住居であるならば、Freedomは欧米の大手多国籍企業社員の住居だ。外観は全面が複合機能ガラス張りの優雅な”塔”。円筒状の外壁全面を覆うガラスの色は太陽の位置によって七色に変化し、見る者の眼を楽しませる。

 トワの操るTorgielはFreedomの基礎部分から複合機能ガラスの外壁が始まる再下層部分にかけてゆっくりと旋回し、内部侵入への足がかりを探す。複合機能ガラスは文字通り複数の機能を持つガラスで、太陽光による発電、紫外線遮断、外敵からの攻撃遮断、ホログラフィックディスプレイ、デジタルイルミネーションと多彩な機能を持つ。その分構造は複雑で、外部への電力や情報のインターフェース部分が必ず存在する。トワたちの狙いはそこだ。

 Torgielの肩の上では防寒を兼ね備えたスカイダイブ用スーツに身を包んだソラが屈託のない笑みを浮かべ、トワに向けて手を振る。それだけでトワの心は落ち着かない。


『ゲゲゲ、人の手の届かないところに行きたい、ってのは人の性だ。人の歴史の中で、これまでに信じられない数の高層建築物が建てられてきた。技術の発達に伴って届く範囲と建物の規模が広がっていっただけだ』


 インカムを通じてジェスターの本体から声が届く。ソラのいない場所ではその品位は以前と変わらない。

 世界で最初に作られた摩天楼は軌道エレベーターのアースポートだった。東太平洋の赤道付近に作られたメガフロート。軌道上への物資の運搬設備や近隣諸国への交通施設、開発メンバーや工事関係者の宿泊施設などが整備されたそれは、天へと伸びる巨大な人工島だった。軌道エレベーター構想は開発に関連していた国々の財政悪化や技術的な問題により頓挫したが、太平洋上で確立された超巨大自律生活圏の仕組みだけは後の世に引き継がれ、そのシステムの頑強さとシンプルな「高さ」への嗜好から各国でその建設は進んでいる。中でも経済格差が深刻な日本の首都東京では、富裕層の安全な生活圏として多くの摩天楼が建設されてきた。ちなみに摩天楼(skyscraper)というのは東太平洋上に最初に作られたアースポートの名称そのもの。「空を切り取るもの」。宇宙へと伸びる軌道エレベーターにふさわしいと当時は言われていた。


『畏怖の対象、富の象徴、上層階級と下層階級の境界線。いろんな意味があるのさ』


 のんびりとした口調のユウジの向こうには広大な東京の街が広がる。圧倒的な身体能力を持つユウジに取ってはFreedomの基礎部分をよじ上るなんて朝飯前だ。コンクリート製の基礎と複合ガラス構造のわずかな隙間、廃熱システムへのアクセスポートでユウジはトワたちに軽く手を振り、ソラは髪を風になびかせながらそれに応える。

 複合機能ガラスの外壁が始まるFreedomの基礎構造の最上部に立つと、東京という海を望む断崖絶壁に立っている気分になる。足元には灰色の霧に覆われた東京の街並、見上げればきらきらと輝く複合機能ガラスの絶壁。Torgielに乗るトワたちはユウジと合流し、アクセスポートへと侵入する。非常時に、スカイダイビングや滑降型自律無人機による脱出を考慮して作られたアクセスポートは、外部からのアクセスを考慮していないためセキュリティは甘い。旧時代の機械式のロック機構なんてユウジの前では何の役にも立たない。

 アクセスポートを這い出るとすぐにFreedomの最外層に出た。高さ十メートルはある複合機能ガラスの壁の内側には、Freedomの稼働状態、太陽光発電システムの蓄電状況、世界各地の時事ニュースなどが立体画像としてあちこちに表示されていて、興味のある表示をアイグラスで確認するとその内容がズームアップされる。


「こいつだな」


 ユウジは様々な立体画像の中からFreedomの内部地図データをピックアップし、アイグラスの内部メモリにダウンロードする。ユウジたち全員がFreedomの地図情報を共有し、位置情報を被せることで、お互いの居場所が確認できるようになる。

 トワはアイグラスをジェスターにつなぎ、Freedomのデータをスキャンさせる。百三十層のFreedomの全施設、住居を人力であたるのは無謀に等しい。しかしジェスターなら朝飯前だ。ジェスターは三秒足らずで目的の場所がFreedomの六十五層、通称セントラル・パークの外縁部にあることを探り出す。


「セントラル・パーク?公園か」

『ギギギ。公園と言うよりは広大な緑地と言った方が正しいなぁ。山麓に川や池、滝壺まであるぜぇ』

「建物の中に?なんで?そんなもの作ってどうするの?」

『自然を満喫するのさ。富裕層は摩天楼の外に出た途端、下層民やテロリストに命を狙われるからな。富裕層は富裕層で不自由なものなんだよ』

 マカロワの言葉にソラはそんなものかと頷く。


 セントラル・パークに入ったソラとトワは眼を疑った。空には雲が浮かび、その隙間から柔らかな光が差し込んでいる。なだらかな斜面には緑が広がり、ところどころに立つ大樹の下には木陰が広がっている。ソラたちの左手には池があり、陽光を反射して水面がきらきらと輝いている。


「すごい—」


 どこからどう見ても自然の草原だ。ここが巨大建築物の一階層だとはとても思えない。


『最上層に降り注ぐ太陽光を多重ミラーを利用して天井から照射しているんだ。時間に合わせて照射位置を変えることで太陽が動いているように見せている。木や草は精巧な偽物だ。本物より手入れがしやすい。複合機能ガラスに立体映像を映し出すことで青空も表現できている。摩天楼に住む富裕層たちの憩いのスペースってわけだ』


 マカロワの言葉を聞き流しながらTorgielに乗るトワは故郷での日々を思い出す。路傍で冷たくなっていた物乞い仲間が言っていた、川の向こうの豊かな国。その姿と目の前の光に満ちた草原の姿はぴたりと重なる。だけどトワは自分がそこの住人になる日が来ることは一生ないとわかり始めている。自分は、こんな世界に安住することを求めている訳ではない。

 三人は平原に足を踏み入れる。ユウジが先頭を、Torgielに乗るトワが殿を、そして二人に挟まれるようにしてソラが歩く。摩天楼の住人の憩いの場であるはずのこの草原に、人の気配は全くしない。それはつまり、ここで誰かが何かを仕掛けてくる、ということだ。摩天楼の住人の避難はあらかた済んでいるのだろう。


『ギギギ、周囲から熱源五。アームドスーツに間違いないぜぃ?』


 ジェスターの声とともにアイグラスのウインドウ上に赤い輝点が現れる。等間隔で少しずつ距離を狭めてくる輝点の主の姿は、光学迷彩で身を包んでいるのか肉眼では確認できない。


「ユーリ?」

『無理だ。お前たちの位置は把握しているが、その階層は分厚いコンクリートの壁に閉ざされて完全に外部からシャットアウトされている。いくらレイヴンでも厚さ一メートルの強化コンクリート外壁が相手ではどうしようもない』

「こっちでなんとかするしかない、ってことだね」


 ユウジは特殊金属製の杖をくるくると回す。トワはソラを抱きかかえ、いつでも跳躍できるように身構える。

 空気を切り裂く音とともに戦端は開かれた。ユウジが杖を一振りして投げつけられた巨大な刃をたたき落とす。踏み込んでくる見えない敵を、ユウジは音を頼りにかわす。


「トワ!」


 ユウジが射線から外れるとともに、Torgielの肩から散弾がばらまかれる。対人殺傷能力は高いがアームドスーツ相手ではほとんど効果はない。しかしそれでも外装甲を覆う光学迷彩を解除させるくらいの威力はある。

 火花を散らしながら現れたのは鎧武者のような全高四メートルほどのアームドスーツ。黒ずくめの四機に対し、一機だけ眼の覚めるような紅色。手にしているのは黒ずくめの四機が刀で紅色が短い槍。紅色の機体は手にしているものと同じ槍を背中に幾本も背負っている。黒ずくめの四機は散開すると、二機ずつ左右からユウジたちに突撃してくる。


「あの機体はKATANA…!」

「KATANA?」

『ギギギ…純和風、完全日本製、正真正銘メイド・イン・ジャパンのアームドスーツさ。戦国時代の鎧武者みたいだろおぉぉ?接近戦ではとんでもなく強いぜぇぇぇ?あいつ相手には、近付かせないのが得策だ』

「って、もう近付かれているじゃん!」


 突撃してきた二機は、トワとユウジに向けて刀を振るうと、そのまま離脱する。気を抜く間もなく次の二体。そして反転してきた二体が再び襲いかかる。機動性には定評のあるTorgielでもかわすのが精一杯。抱きかかえられたソラは眼を回している。


「トワ、離脱しろ!」


 斬撃を杖で弾き返したところでユウジが叫ぶ。その声に弾かれたように跳躍するTorgiel。


「危ない!」


 叫ぶソラに反応し、Torgielはスラスタを吹かして反転する。反転したTorgielの左腕を紅色のKATANAが投げた槍が吹き飛ばす。

 Torgielはバランスを崩しながらもソラを抱きかかえたままなんとか着地する。その瞬間を逃がさじ、とばかりに黒いKATANAが殺到するが、ユウジがなんとか弾き返す。

 空を飛べるTorgielだからこそ避けられたが、他の機体だったら串刺しになっていたところだ。


「いい連携だ。歴戦の部隊でもこうはいかない」


 紅色のKATANAが槍を投げつけ、それをユウジがたたき落とす。間髪入れずに再び黒色の機体の突撃が始まる。こちらに動きを見切らせないように蛇行しつつの突撃は、敵ながら見事だ。


「敵に感心している場合じゃないだろ!どうすんだ!」


 防戦一方のTorgielとユウジは次第に壁際へと追いつめられていく。草木の緑に彩られた草原はKATANAとTorgielのスラスタに黒く焼かれ、ところどころ無機質な金属製の地肌が露出している。


「俺に考えがある。合図にあわせて跳躍しろ!」


 複合機能ガラスで覆われた壁面を背後にして、ユウジが叫ぶ。黒いKATANAの斬撃をいなしながらリズムを取るように一歩、二歩と後ろに下がったユウジは、そのまま腕を高く上げる。考える間もなくTorgielは高々と跳躍する。

 バックステップを踏んでいたユウジはそのままTorgielの肩に飛び乗っていた。ソラとユウジ、二人の重さに耐えられずTorgielの身体は傾ぐ。そこに紅のKATANAから槍が投げつけられる。


「トワ、俺をあいつに向かって投げろ!」


 ユウジの言葉に、考える間もなくTorgielはユウジを紅のKATANAに向けて投げつけていた。ユウジは眼もくらむような速度で飛びながら、空中で槍を叩き落とすと、そのまま紅のKATANAに肉薄する。


「—!!」


 ユウジと交錯する直前、紅のKATANAは身を捻る。しかし、振り抜かれたユウジの大質量のステッキは、そのままKATANAの胸部を剥ぎ取り、アームドスーツを操縦する者の姿を露にする。


「—女か!!」


 一瞬の空白。しかし先に反応したのは紅のKATANAを操るレイカだった。バックステップでユウジと距離を取ると腰に差した二本の大刀を抜き、ユウジに向けて突撃する。

 レイカの操るKATANAの突撃を容易く受け止めると、ユウジは大質量のステッキを振るう。いかにアームドスーツとは言えユウジのステッキを受けてただで済むはずが無い。しかし紅のKATANAは片方の大刀で軽々とユウジのステッキを受け流すと、そのままもう片方の大刀で鋭い斬撃を見舞う。そのままユウジのステッキと、KATANAの二本の大刀は凄まじい速度で激突をはじめる。

 不思議な感覚だった。はじめのうち、ユウジは紅のKATANAの身のこなしに心の中で驚嘆していた。あの女のアームドスーツ操縦の腕前は素晴らしく、ユウジがこれまで出会ったアームドスーツ乗りの中でも一、二を争う腕前だ。ユウジの渾身の打撃はことごとくかわされるかいなされ、大振りでもしようものならその隙を目掛けて稲妻のような斬撃が繰り出された。そのためらいのなさにユウジはまた驚嘆した。しかしKATANAの斬撃を受け止め、ステッキによる打撃を受け流されるにつれて、次第にユウジの心の中に浮かんできたのは別の感覚だ。

 ー共鳴している。

 それはおそらくユウジだけの感覚ではない。相手の女パイロットも感じていたはずだ。熟練の、まさに人を超えた者たちだけが到達し得る極限の域でのハーモニー。


 —すごい。


 それはもはや戦闘ではなく、芸術に近かった。その瞬間、ユウジはソラやトワのことも、使命さえも忘れて戦闘に没頭した。一瞬でも気を抜けば命を取られる、まさに死と隣り合わせの領域での舞踊。

 ユウジはステッキをKATANAの胴に向けて横薙ぎに振るう。紅のKATANAはそれをバックステップでかわす。空振りの隙を逃さず、リーチを生かした斬撃がユウジの首元を襲う。ユウジは身を捻って紙一重で斬撃を交わしつつ、伸びきった腕部目掛けてステッキを振り上げる。KATANAのもう片方の大刀がその打撃を受け流し、大刀を握りしめた拳をユウジに振るう。ユウジは拳に一瞬だけ手をつくと、そこを支点にして身体を反転させながら飛び上がり、KATANAの頭部目掛けてステッキを振り下ろす。KATANAは上体を大きく反らして仰向けに倒れると、そのまま足のスラスタを吹かしてユウジの下をくぐる。そしてそのまま空中のユウジ目掛けて大刀で突きを見舞う。ユウジは空振りしたステッキの先端を大刀に合わせ、突きの勢いを利用して大きく飛び上がるとKATANAから距離を取って着地する。

 自然と笑顔が浮かんでくる。見るとKATANAのコクピットの女も熱い眼差しでユウジを見つめている。そう、これはあの女と自分が織りなす至高の舞踊だー。刹那の楽しみにしか人生の意味を見いだせない、自分にとって、この瞬間はまさに「生きている」瞬間だ—。


 しかしそんな至高の瞬間にも終わりの時が来る。鈍い音とともにKATANAの腕の付け根から火花が散る。ユウジの突きをステッキで受け止めた際、KATANAの腕に想定以上の負荷がかかったのだろう。あれではもう戦えまい。

 残念な顔を浮かべるユウジと女。しかしユウジにはわかっている。あの女とはまた戦う。そして二人だけの至福の瞬間を、また味わうのだ。それはおそらく、いや間違いなく、あの女も理解している。


「どうしろって言うんだよ、これ!」


 斬撃と打撃の応酬を繰り広げる紅のKATANAとユウジを横目に、トワの操るTorgielはひたすらに回避行動を続けていた。四機のKATANAの波状攻撃を身のこなしだけでかわす。飛行性能があるとはいえ、左手を失いソラを抱えた状態では長距離の飛行は難しい。背中のスラスタを吹かし、数十メートルの距離を飛ぶのがやっと。しかし黒いKATANAは着地の瞬間を狙い、猛スピードで突っ込んでくる。


「壁際に行って!」


 ソラの言葉にトワは考える間もなくTorgielをセントラルパークの壁際に向けて疾走させる。壁に向かうということは退路を断つということでもあり、自殺行為に等しい。しかしソラの言葉を信じきっているトワに迷いは無い。


「走って!」


 四機のKATANAが肉薄する。一機目の斬撃を跳躍で、二機目の斬撃を身を捻って交わし、Torgielはさらに疾走する。コクピットパネルにはレッドサインが表示されっぱなし。左手を失った上に無茶なアクロバットを何度も繰り返している。今のままではもう数分も機体がもたない。


「あった!あれ!」


 叫ぶソラの指差す先、緑の広がる草原の一角にはぽつんとコンクリートの地面があった。そこだけ壁が複合機能ガラスではなく、五メートル四方程度の金属製のシャッターになっている。


「なんだあれ!」

「非常用の外部ハッチ!急いで開けて!」

「そんなこと言ったって!」


 武器らしい武器をほとんど持たないTorgielではあのシャッターを破ることは出来ない。


『ギギギ…二十年前のアストロ社製のハッチか。俺をあそこの端子につなげよぉ。あんなシャッター一瞬でハッキングできるぜぃ?』

「ジェスター!頼りになるぅ!」


 猛スピードで突っ込んだTorgielは、シャッターの支柱を残った右手で掴んで急旋回する。足元で火花があがり、強烈なGがトワとソラを襲う。そのままシャッター脇に取り付けられたパネルに突っ込むと、巨大な外部接続端子にTorgielの右腕を叩き付ける。


『認証クリア。オールグリーン。外部ハッチを開放します』


 ジェスターがコンマ数秒でハッキングを終えると、シャッターは鈍い音を立てながら左右に開き出す。差し込む陽の光に眼を細めるトワたちを、次の瞬間、衝撃が襲った。

 吹き飛ばされたTorgielはなす術も無く地面に転がった。トワは必死にソラの身体を衝撃から守る。気がつくと四方を四機の漆黒のKATANAに囲まれていた。間近で見るとその姿は本当に戦国時代の鎧武者そのものだ。よく見ると四機とも兜の前面、立物が違う。それぞれ意味があるのだろうが、トワにはわからない。


『残念だったな、少年』


 トワの正面、開かれたシャッターとTorgielの間に立つKATANAが声を発する。くぐもったその声には武士らしい実直さと厳しい訓練を耐え抜いた者だけが持つことを許される、落ち着いた自信が感じられる。

 四機のKATANAが大刀を振りかぶる。トワはソラを抱えた右手を引き寄せる。

 —ここで終わるのか。

 守ると誓ったものを守りきれず、自分はここで終わる。悔しさに涙がこぼれる。自分にはまだまだ力が足りない。もっと、もっともっと鍛錬が必要だった。

 悔しさと共に顔を上げた時、トワの視界に何かが入った。目の前の黒いKATANAの後ろ、開かれたシャッターの外。そこには、天空へと遥かに伸びる一筋の線。


—祈りの塔。


 次の瞬間、金属同士がぶつかる高い音と共に、四機のKATANAの構えていた大刀が一斉に吹き飛んだ。

 状況がわからずに四機のKATANAの動きが止まる。逡巡したのはその一瞬。しかしその一瞬で勝負は決まっていた。獰猛な烏から放たれた弾丸に両膝を撃ち抜かれ、Torgielの正面に立っていたKATANAが崩れ落ちる。その瞬間を逃さずにTorgielはシャッターの外に飛び出すと右手だけを使い、逆上がりの要領で上層階に身体を引き上げる。

 シャッターの中では残された三機がスモークを炊き、崩れ落ちた一機を抱えて走り去っていく。判断に迷いが無い。強敵である証だ。

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