第119話 審判権限
『あえてどんな魔法が飛び交っているかの解説は致しません。ただ見えている以上に複雑かつ魔法使いらしい戦いが展開されているのは確かです』
そんな聡美さんの解説が入る。
「予知魔法のレベルの違いって、どんな感じなの?」
「レベルがある程度高ければ。予知魔法で『最も起こる可能性が高い未来』以外の選択肢を見る事が出来る。自分が勝つ為に必要な選択肢はどれかという判断も出来る。澪の予知魔法はそのレベル。
楓の予知は前に自分の言った通り『負ける可能性が高ければ負ける未来が見える』レベル。予知魔法だけを考えると楓は勝てない」
それって……
「そんなのどうやって戦うのよ」
「負ける未来とあえて違う行動をかける。選択肢を揺さぶって自分に有利なようにする。当然本来の選択より難しい状態になるが、そこを他の魔法でカバーする。楓がやっているのがその実践だ」
とんでもない状況のまま、ラリーは続いている。
明らかにボールが飛んでいく最適場所へ陣取っている澪さんと、魔法で強引に動いている楓さん。
「でもそれって楓がかなり不利じゃ無い」
「楓の方が魔力も体力も遙かに高い」
どこまでも続くラリーの応酬。
そして、ついに。
澪さんがふらついた。
球を返したがコート内に入らない。
やっと楓さんが15点だ。
「でもこれ、4ゲーム先取でしょ。そこまで2人の体力が持つの?」
「持たなかった方が負ける」
理彩さんの説明は簡潔だ。
そして、見ているほうもしんどい戦いが延々と続く。
まさに延々と。
そして予定時間の30分を過ぎてもまだ2ゲーム目というところで。
『審判権限によりドクターストップを宣言します』
舞香さんから、そんな前代未聞のメッセージが入った。
『これ以上試合を続けると、双方の身体に悪影響を及ぼす後遺障害が発症する可能性が急増します。また双方既に、次の試合に身体及び魔力が対応出来ない状態になっています。
以上の理由により審判権限で本試合は終了とします。試合としての処理は双方負け、第1試合の勝者四季さんが準決勝第1試合に出場になります』
ブーイングが飛ぶ。
でも楓さんは笑顔だ。
「まあそうだな。ちょっと色々やり過ぎた」
そう言って笑顔で挨拶して返ってくる。
「どうしたの楓。いいのそんな結果で」
「今回に限り、澪に負けなければそれでいいんだ。レベルが高い未来予知も絶対出ないという事を示せれば」
未来さんと僕は???という感じだ。
理彩さんはわかったようだけれども。
「それについて、保護者が来ている」
保護者?
見ると、歩美さんが真後ろに来ていた。
「すみません。無理をさせてしまって」
「いいのいいの。悔しくないかというと悔しいけれどさ。勝ちに持って行けなくて」
楓さんはそんな台詞を爽やかに言う。
「多分この先も続けていたら、楓さんが勝ったでしょうね」
「でも魔法移動以外の方法では当分動けなくなる。それじゃ澪が可哀想だ。流石舞香さんだと思うよ。切り上げタイミングとしてはぎりぎりかつベストだ。
ただちょっと心残りは歩美さんと試合をまでしていない事かな。戦闘でもテニスでもいいから、もう一度『闇の右手』の魔法と戦いたいな」
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