第40話 ささやかな夕食会
「そうやって出来ない魔法も訓練して出来るようになる訳か」
「そうでもないな。共通点が多い魔法なら別だけれども」
未来さんが僕の疑問に答えてくれる。
「冷やすのと温めるのは同じ系統に近い。だから片方が出来れば努力次第でもう片方が出来る可能性も高い。でも例えば会長のような空間操作魔法は考え方が違いすぎて無理だ」
なるほど。
「逆に会長のような特異な魔法持ちは普通の魔法は苦手か出来ないと」
「大体はそうだ。中にはマルチ系統な魔法使いもいるけれどな」
そう言えば合宿のテニスで優勝した真奈美さんはマルチ系って聞いたな。
「御飯まもなく」
そう言って理彩さんが皿を持ってきた。
上にはラップでくるんだ冷凍御飯が載っている。
「よし、今日も挑戦だ」
未来さんが自分の前に冷凍御飯を置き、ラップを外した。
◇◇◇
麻婆茄子はなかなか美味しかった。
「冷凍挽肉と冷凍揚げ茄子、気分で冷凍麩を入れただけ」
と本人は言っているが結構凝ってはいる。
麻婆豆腐の素とかを使わずに豆板醤やコチュジャン、みりん等を使っているとか。
理彩さんに言わせれば、
「この方が安い」
からだそうだけれども。
なお未来さんの御飯解凍はまだまだ練習が必要な模様。
「自分でやった結果だから食べられる。これを他人から出されたら怒る」
という感じの出来だそうだ。
見てわかる程度に酷い出来だけれど指摘はしない。
食べている本人が一番良くわかるだろうから。
そんな訳で美味しく御飯を食べて。
「そう言えばこの夕食のお代は」
「今日はいい。今度買い物の時に一緒に出して欲しい」
「そうだな。3当番制にすればこっちも楽になる」
えっ。
「うちの寮は女性侵入禁止だけれど」
「ここか私の部屋でいいだろう」
いいのだろうか。
理彩さんも頷いているけれども。
「料理は自信無いけれど」
「覚えろ。私も覚えた」
さいですか。
まあそんな訳で。
「3人なら食費が更に節約」
なんて喜んでいる理彩さんを見ると断る気にもなれず……
ああクラスメイトの栗原よ。
君ならきっとこの環境を喜ぶんだろうけれどな。
というのは置いておいて。
「じゃあ3人での当番表は明日以降作るとして。今日は私が食器洗いの日だな」
「あ、手伝うよ」
「キッチンが狭いし1人で充分だ」
未来さんはそう言って食器を持って流し場へ。
確かにコンロ1口と狭い流しだけのスペース。
2人作業は無理だな。
という訳で理彩さんと2人になる。
会話が出ない。
元々理彩さんは無口。
合宿の時も割と一緒にいたけれど、専ら相づちとかに徹していた。
そして僕は基本的に女子と関わった経験が非常に少ない。
何を話していいか意識する程わからなくなる。
うん、弱った。
微妙に気まずいな、と思ったところで。
「あの……」
理彩さんが口を開いた。
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