第160話 俺は…。

 地球の神様たいる所に戻るか、私の世界で生きるかすぐに決めて欲しい。


 今分かっている事は、2択で時間があまりないと言う事。それだけの事をポンと決められず少し黙ってしまう。


「神ジンくん質問いいかな〜?」

「ん?どうぞ。」

「地球の神様って私のいた場所ですか〜?」

「あぁ。君達のいた場所だよ。」

「ふむふむ。じゃまたここに戻ってこれる?」

「またこちらにか…白い子なら出来るかもしれないし、出来ないかもしれない。」

「出来るかもなのね。」

「そうだね、否定はできないけど可能性は低いと思うけど。」


 先輩が神様に質問をし始めた。空気がちょっと重かったけど少しずつ和らいで行くのが分かる。

 そうか、ここに帰ってくる事が出来るかもしれないのか…。


「あ、あの。わ、私も質問。い、いいで…よ、よろしいでしょうか?」

「小さな青い子は律儀だね。そんな畏まらなくていいよ。」

「ち、小さな青い子?…きりんです、網野きりんといいます。」

「名前?了解だ。それできりんちゃんの質問は?」

「わ、私…私達も行けますか?わ、和歌と翔さんの世界に。」

「ん〜それは出来ないかな。あくまで可能性があるのは白い子だけだし。」

「わ、和歌だけなんだ…。あ、ありがとう。」


 戻ってこれたとしても先輩だけなのか…そして仲間を連れて行くことも出来ない。そう言えば“白い子なら”って言ってたか…。


「さっき程から気になってたのですが。白いとか青いって何ですか?」

「その人の魔力の性質かな。因みに虫嫌いの子は緑で、その彼女ときりんちゃんは青色だよ。」

「か、か、彼女!!??」

「ん?違うの?でもお互い…「あーー!」…こんなにも仲よ「あーー!」…わか「あーー!」…。」

「か、神様程々に。」

「ふふ。まぁ後は若い者に任せて。続き補足するよ〜。」


 奏人さんが気になっていた色について聴いてくれた。途中坂俣さんが真っ赤になって神様の言葉を遮る事態があったけど。


 ルカさんが前に見てくれた時は、俺は青って言われたような…でも神様は俺の事を“黒い子”って言ってたな。


 神様が言うに魔力には色付けされるようになっていて、赤と青と緑はこの世界に定着しているとの事。

 逆に先輩の白は感受の魔力で、何にも染まらないし染められる色との事。

 簡単に言えば白が神様に最も近い存在。可能性は低いけど神様になれるかもね〜っと凄い事も言っていた。


「で、黒い子なんだけど。翔君だっけ?」

「はい、そうです。」

「黒いのは誰しもなる可能性があるんだけど、うっすら青色が見えるんだよね。」

「それは何か問題でも?」

「うん。ここの世界に定着すると魂を剥がせなくなるんだよ。」

「剥がす?……それっても違う世界に行けないって事ですか?」

「そうそう。理解が早くて助かるよ。」


 魂を剥がすか…それがどうなっているかは聞いてもしょうがないだろう。それよりもこれからをどうするかだな。


 もしかしたら神様に会う事もなく、この世界に定着してしまったら選ぶ事も出来なかったんだろう。

 先輩やきりんさん達と一緒に色々やって楽しく過ごしていたかもしれないけど、きっと元の世界での後悔が残っていたのかもしれない。

 俺は天河海できりんさんと話していた事を思い出した。


………。


 もしもその後悔があるのであれば、ここで生きて下さい。いつかまた会えますよ。


 会う?そんな事が?


 出来ないと決まっていません。だってまだこの世界の事何も分からないのでしょ?


 そっか…。そうですね!一緒に世界を知りましょう!


 はい!


 ………。


 俺は顔を上げて…先輩を見た。先輩は俺と目が合うと軽く頷くだけだった。でもあの目はもう決めているんだろう。


 きりんさんはこちらに気がついて少し顔を伏せた後、悲しそうな笑顔をだった。


 その後は誰が言い出したわけではなく、みんなで寝ながら一緒に話をする。もちろん神様も、システムのシーちゃんもいる部屋で。なんだか移動教室のようだな…こんな…日も……。




 翌朝いつのまにか寝ていたようだ。


 周りを見るとみんなまだ寝ていた。


 俺は起こさないように階段を登る。


 『17:01:18…17…16』


 その数字を見て少しドキッとしながら、俺は外に出た。


―サァ…


「ん〜まだ少し早いな。それに少し肌寒いかな?」


―サァ…


「17時間か。」


―サァ…


「どっちを選んだとしても後悔はしそうだな、でも決めなきゃな。」


―サァ…


「そして独り言ってる俺寂しいやつみたいだな。」

「わっ。」

「あ、きりんさん。」

「あまり驚かないね。そ〜っときたつもりなんですけどな〜?」

「もしかしたら来るんじゃないかなって思ってたからかも知れません。」

「実はこっそり機会を伺ってみたり。」

「そうなんですか?」

「ふふ。さーどうでしょう。」


 前とは違い今は黙って海を眺める。


 どれくらいこうしていただろうか。


 この子といると自然と安らかな気持ちになる。

 守ってあげたい様な…この子ってきりんさんに失礼か。

 この事は心の中に留めておくとしよう。


「さて、戻りますか。」

「そうだね……ん?あ、翔さんちょっと待ててもらえますか?」

「はい、いいですよ。」


 そう言うときりんさんは地下に降りて行った。


「わぁぁぁ!!!!」

「うぉ!!??って和歌先輩。」

「驚き過ぎだよ〜。」

「気配も無ければ、驚かす声の声量もですね。」

「元気は必要だよ。あ、それでね。きりんちゃんに交代って言われてここに来たんだけど。」


 さっきのきりんさんの控えめ甘い感じは一切ない。本気で相手を驚かそうという、気合が滲み出ている。先輩は朝から元気いっぱいだ。


「翔くんはどうするか決めた?」

「和歌先輩はもう決めたんですか?」

「うん。あ、どっちにしたかは秘密だよ。」

「決まってるんですね…あの悩んだりはしなかったんですか?」

「どっちになっても私は私だし。どうやっても後悔は消えないし、だから私…私達は今頑張るんだよ。」

「…そう…ですね…。」


 本当に先輩は凄いな。考えてなさそうに見えて、色んな事考えてるんだよなぁ。芯があるから迷わず進めるにかもしれない。

 ならば俺も自分で納得できるまで考えるだけだ。



 俺は…。

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