第159話 長いそれとも短い?
暗闇に浮かぶ赤と青に光る球体。
「一向に小さくならないね〜。」
「あれ〜?どんな質量してるんだ?気持ちもっとキュッと!」
―ギュルン
「はい、手のひらサイズ。」
「おぉ、凄い凄い。」
「ははは。それほどでも。」
先輩に言われたままに球体を小さくした神様。
褒められて気分は良さそうだ。
部屋に入ろうと言われ、俺達は地下に戻る。
「で、それそのまま持ってるの?危なくない?」
「ん〜下手したらさっきの炎の竜巻に戻るかな?もしくは爆発…どうしようかな。」
どうやったかは知らないけど圧縮したそれを持ったまま入ろうとする神様に先輩が危なくないか聞く。
見たまま考え込む。
「そのボールって熱いの?」
「いや、熱くないよ。触ってみる?」
「うん。」
「…あ、和歌先輩、力入れたり叩いたりしちゃダメですよ?」
「む。私が握りつぶしたり、投げてみたりすると思ったの?そんな事はしないよぅ。」
「「「…(不安だ…。)。」」」
神様から借りた危ない球体を少し触って確かめる先輩。やらないでと言ったのに、軽く指で弾いてた。
それを見た他3人が驚いて距離を取る。俺は神様が何も反応しないから、大丈夫なんだろうと思って冷静でいられる…ある一言を聞くまでは。
「あ、白い君・・・。返してほしいな。」
「白い君?私?はい、ありがとう。」
「(あぶねぇ…まさか、デコピンで結界が壊されそうになるなんて。)」
「……。」
小声で喋ったのを聞こえたのは俺だけらしい、先輩に物を扱わせるのは注意が必要なようだ。
そして当の本人は額に手を当てて、何か考えている風だ。
「神様。それって海に投げて爆発させたらどうかな?投げる段階で爆発しちゃうかな?」
「強い衝撃には弱い様だけど、投げるのはいけると思うよ。海に当たったら状態が変わるから爆発すると思うし。」
「よし、ならわた…「翔あんたが投げなさい!」…もう天ってば。私何も言ってないよ?」
「翔って…黒い子か…大丈夫だろう。はい、全力でどうぞ。少し結界強化しといたし、君なら白い子より安心だ。」
「白い子?和歌先輩の事か?まぁそう言う事なら全力で投げますね。」
暗くなった海を見ながら軽く肩を回す。これ本当に熱くないんだな、それと叩いたり握ってみたり…はしない。
神様が俺に全力でって言うくらいだから、この球体は相当ヤバイ物なのかもしれない。なるべく遠くに投げよう。
「じゃーいきますよ。」
建物影から見守る5人。俺以外避難してるじゃん、これ大丈夫なのか?
「大丈夫だ!結界は強化したし出来る事はやった!」
「翔くん、神様のお墨付きだよ!ファイト〜。」
「は、早く投げちゃいなさいよ!」
「翔さん、ご武運を。」
「か、翔さん。が、頑張って。」
改めて気合を入れなおしていく。
「一球入魂ってこんな気持ちか?いや、何か違うか…すぅ…はぁぁぁ!!」
―チュゥゥン……ドゴォォォォォォォ!!!!!
「んあ!?っく!」
「翔くん!!??」
手元から離れて1メートルくらい先で…爆発した。空に見えた彗星のイメージが1番近いだろうか?それとも手元からファイヤボールでも投げた様にも見えたであろう。
―ドン、ドン、ズザァー……ゴン。
俺は目の前で爆発した何かに吹き飛ばされて森の木にぶつかって止まれた。
「翔くん…大丈夫?」
「ん…っい…いや、ちょっと擦りむいたくらいですね。」
灯台からここまで駆けつけた先輩に聞かれて自分の状態を確認する。とっさに頭は庇ったらしく、タンコブとかもない。背中がちょっとズキっとするけど打ち付けたかな?後は擦り傷くらい。
あれだけの爆発でよくこれだけで済んだもんだ。
「そ、そっかぁ…。」
「…大丈夫ですって。だから……そんな泣きそうな顔しないでください。」
「うん。」
やけに素直で可愛い…いやいや大人しいな。それくらいヤバイ爆発に見えたんだろう。
その後灯台に戻るまで先輩が肩を貸してくれた。大丈夫って言ってみたけど、泣きそうな顔されたので借りておいた。
「流石のあんたでも、あれはダメージ負うのね。無事でなによりだわ。」
「まぁ…びっくりしました。」
「か、軽い反応ね。」
坂俣さんが爆発の凄さにちょっと引いたくらいとよく分からない反応だった。
「か、翔さんご無事で。わ、私も肩貸します。」
そう言うと先輩の反対側に回る。
「っぐ。」
「だ、大丈夫ですよ。お気持ちだけ頂きます。」
「す、すいません。」
先輩とは10センチくらいの身長差だからいいんだけど、きりんさんとは20センチくらい違う。肩を借りるときりんさんが背伸びをするか、俺が屈まないとだから気持ちだけ頂いといた。
残念そうに見えたけど、次何かあった時にでもお願いしますと言う話になった。
「いや〜結界強くしたのに簡単に突破されちゃうと神様自信なくしちゃうな。」
「和歌と翔だし…しょうがないのかしら。」
「坂またさん、そんな和歌先輩と一括りにされましても…。」
「そうそう…って翔くん、ひど!」
「ふ、2人とも。ど、どんまいどんまいです。」
「あ、そこにはきりんも入ってるから大丈夫よ。」
「わ、私も!?」
ヤバイ子として一括りにされた俺と先輩ときりんさん。
何がどうしてなんだろう?やらかしたのはきっと神様の問題だと思う。
『おかえり、マスター。』
「ただいま。シーちゃんの話に聞いていた通り面白い奴らだったよ。」
『でしょ〜めちゃくちゃ感がマスターそっくりで。』
「…お、おう。」
システムと親しく話し始めたし、この少年がここのマスター兼神様である事は間違いないみたいだ。
「あ、そうそう。先に話しておかないといけない事があったんだ。白い子と黒い子いいかな?」
『マスター。彼らにはその呼び方じゃ分からないよ。色は見えない様にしたんでしょ?』
「おっと、そうか。さっき名前を呼ばれて…翔と…元気な先輩さん。」
神様に呼ばれて俺と、元気な先輩が呼ばれた。
「ちょっと緊急だから呼んだけど、今から言う事しっかり聞いて欲しいな。」
「は、はい。」
「うん、分かった。」
「この世界は僕が造ったって事はちらっと言ったっけ?」
「神様でここのマスターであると言う事は理解してます。」
「ほぉ、物分かりがいい子は嫌いじゃ無いよ。簡単に言うと僕は神様に造る力を貰った神様見習いって感じなんだよね。」
「神様でも見習いとかあるんだね〜」
「そうだね。僕も最初は色々戸惑ったけどね。さて本題だ。」
空気が一つ重くなった様な、息苦しさを感じる気がする。真面目な顔つきの少年がこちらに問いかけてくる。
「地球の神様たいる所に戻るか、私の世界で生きるかすぐに決めて欲しい。」
「「……え?」」
俺と先輩は突然言われた事が、嘘では無いっと分かっていながらも信じられずにいた。
「白い子…はまだ猶予がある。だが黒い子…翔は時間が無い。そしてチャンスは1度だけ。2人や皆で考えて貰っても構わんが、明日のこの時間までが限界だ。シーちゃん。」
『ん?時間のプログラム?24時間ね。了解、表示しとくわ。』
「急かして申し訳無いが…ここで生きていくか、どちらにしても考えてもらいたい。」
いつかはその時が来ると思っていた。戻る事が出来ればと…
唐突に告げられたが、俺には時間が無いらしい。24時間1日が長いと今までは思ったけど、こんなにも少ないと感じたのは初めてかもしれない。
でも神様が言うのだから考えなければいけない。
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