第76話 気持ちを掴む試合。

―ズパァン!

―パン。

―スパァン!

―パン。


「っく。そのスマッシュ厳しいです!」

「そう言って拾っているではないか。」

「やられっぱなしも…っほ。」


―ピン。


「そのヘアピンは通らないぞ。」

「まだまだ。」


―ピン。

―パン。

―パン。


「今度はこっちの番です。」


―ズパァン!

―パン。

―ズパァン!

―パン。


「スマッシュも鋭くなったな。だがまだ足りないぞ!」

「涼しい顔して拾って…網野さんが凄いんですよ。」

「そんな事ない。翔も十分凄いぞ。」


―ズパァン!

―パシュ!

こつん。


「ふふ。油断したな。」

「スマッシュをプッシュで返すとか。」

「……。」

「む?誰かコールやってはくれないのか?」

「あ、僕がやります。ワン・ラブ。」

「すまんな。頼んだ少年。」

「は、はい!網野師匠!」


コールをやってくれる人は網野さんを師匠と呼んだ。

言われた網野さんは若干固まったように見えた。


「…あー、まぁ。なんでもいいか。」

「網野さ…師匠。次行きましょう。」

「…翔も周りを見てみろ。」

「え?」


網野さんに言われて、俺は周りを見てみる。


「きゃ!こっち見たわ!」

「兵頭様!頑張って~!」

「…あ、はい。ありがとうございます。」

「さぁ次行くぞ…兵頭様。」


始まったばかりだが、両者にファンができたっぽい。

とりあえず今は試合に集中だ。

5ポイントマッチだし、初めから飛ばしても魔力はもつだろう。


―スッパーン。

―スパ!

―スパ!

―スパ!

―スパ!


「師匠のあれはドライブ?」

「だな!師匠がんばれ!」


―スパ!

―スパ!


「兵頭様カッコイイ…。」

「凛々しいですわ。」


―スパ。

―パシュ!


「サービスオーバー・ワン・オール。」

「むぅ。少し油断した。」

「ふぅ。これは違った緊張がありますね。」


網野さんのドライブ軌道が少し上がった。

俺はそれを見逃さずに、プッシュで押し込む。

網野さんは部隊内で訓練しかしてないから、人に見られる事に慣れていないのかもしれない。

俺は高校の大会とかで人に見られるのは慣れている。

今が攻め時だな…。


「次、行きますよ。」

「ふぅ…。あぁ。」


―スッパン。


「っく。ショートか。」


―パン。


「そこです。」


―ズパァン!


「ツー・ワン。」

「むぅ。」

「…。」


やはり少し動きが硬い気もする。

だが、ここで油断してもいられない。

網野さんならきっとすぐ慣れてくるはず。


「次、行きます。」

「……。いつでも来い。」


ここで一気に決めるしかない。

ファン達に見守られながら、試合はヒットアップしていく。

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