第72話 旅気分で護衛。

―ガラガラガラ


「偶にはゆっくり行くのもいいね。」

「そうですね。いつも走ってばっかりでしたし。」

「てか。この世界にも馬って居たんだね。」

「俺もそれ思いました。学園には居ないのかもしれないですよ。」


俺達は町長達と馬車に乗って大蛇回収に向かっている。

始めは馬車と平行して走ろうかとした。

戦闘になる事もあるから、大人しくしてくれと言われた。

そんな訳で俺と先輩はどこか旅気分だ。


「翔よ。学園にも馬は居るぞ。」

「え?馬居たんですか?」

「騎士部隊は乗っているし、私達も借りる事は可能だ。」

「それなら町まで馬を使えば良かったのでは?」

「それも考えたが、走った方が早いと思ったんでな。」

「確かにそうですね。」

「…それは坊主達だけだと思うぞ。」


町長がボソッと呟いたけど、聞かなかった事にしよう。

道中地図を確認しつつ町長は進んでいく。


「すんなり着きましたね。」

「…なんだ翔?」

「いえ。何も言ってませんよ。」

「…そうか。」


土地勘があるのか、迷わず大蛇の所まで来た。

俺達がここまで来るのに結構走った気がするが。

網野さんは思わず見てしまった。

すぐに目が合い俺は慌てて、なんでもないと誤魔化す。


「さて、わしらは解体作業を始めるから、坊主達は魔物からの護衛を任せる。」

「了解です。網野さんどうしますか?」

「この前と同じ布陣でいいだろう。判断は各々に任せる。」

「はーい。わかったよー。」

「和歌先輩。一応言っておきますが、気を倒したりはダメですからね。」

「む。そんなのわかってるよ!翔くんくらいにしかあれはやらないよ。」

「出来れば俺にもやらないでほしいです…。」

「ん〜考えとく!」


先輩は怪しげな微笑みを残して、昨日の配置に移動する。

あれはまたいつかやるな。いつでも気は抜けそうにない。


「坊主一つ聞きたいんだが。」

「はい。なんでしょうか?」

「さっきの会話からして、この木はさっきの姐ちゃんが?」

「そうなんですよ。和歌先輩が考えがある!って言って倒したんですよ。」

「……。」

「しかもその木の倒れてくる場所に俺も居て、危うく巻き込まれるところでしたよ。はは。」

「そりゃ笑えんな…」

「ですよね!和歌先輩は予測出来ない事をやってくるので、いつも気が抜けないんですよ。」


位置的に近くに居た町長が俺に尋ねてきた。

その笑顔は若干引きつっている。

その後も昨日の事をあれこれ聞かれた。

その度渇いた笑いが聞こえるが、やはり先輩の行動は異質らしい。


「うわ!魔物が出たぞー!!」

「やぁ!」

ーガルゥゥゥゥ…


「こっちにも来たぞー!」

「せや!」

ーガルゥゥゥゥ…


「人がこれだけいると、魔物も寄ってくるんですね。」

「そうだな。だけど今は魔物に同情しちまうぜ…。」

「お。こっちにも来ましたね。では退治してきます。」

「あ、あぁ。程々に…な。」

「了解です。では…。」


こうして大蛇解体作業は順調に進みました。

魔物の断末魔を聞きながら…。

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