第49話 戦闘訓練は本気で?

俺達は朝食を済ませて、運動できる場所に来ている。


「さて、戦闘訓練をする訳だが。」

「「はい!」」

「気合は十分でいいんだが。そう畏まらなくていいのだが。」


網野さんはまたこっちの性格になった。

俺と先輩はまだ慣れないか、少し畏まってしまう。


「まぁいいじゃないきりん。その内慣れるわよ。」

「ルカが言うならいいのだが。翔と和歌に改めて聞きたいことがあるんだが。」

「はい。なんでしょうか?」

「本当に戦闘訓練とか武術の経験はないでいいのか?」

「翔くんも私もないです。」

「ふむ。では見た事とかはあるか?」

「見た事…テレビとかではあると思います。」

「あっ!あと翔くんとやったゲームも戦闘じゃない?」

「テレビ?ゲーム?それは何だ?」

「え?テレビないんですか?」

「翔が言ってるテレビに、和歌が言っているゲームも私は聞いたことがないな。」


びっくりだ。こっちの世界にはテレビとかゲームはないのか。

そう言えば、部屋にも食堂にもなかったな。

それと網野さんに見た事はないか?って言われてちょっと考えたけど。

格闘技とかアクション映画なんかも、戦闘なんだなって思う。

あと先輩の言うゲームも擬似体験に近いんじゃないのか?


「翔達の居た世界では、テレビやゲームと言われる何かで見ることはしたでいいのか?」

「それで見た事になるのであれば。」

「そうか…。ならば見せる方が早いか。ロー、ヘレン。」

「お。出番ですね。いつもの手合わせですか?」

「…。」


ローランドさんとヘレンさんが少し離れた所に移動する。

ローランドさんの答えに、ちょっと考えて網野さんは言った。


「魔力使って構わん。5分全力で戦ってみてくれ。」

「ってマジですか?これは燃える展開だ!ヘレンさんいいですか?」

「…あぁ。」


網野さんが言った後、この場の空気が変わった気がする。

そしてスタートはローランドさんの先制で始まる。


「うりゃぁぁ!!」

―パーン!!

「…単調。」

「へっ!まだまだぁ!!」


ローランドさんの右ストレートも軽々受けるヘレンさん。

体型差があるのに、軽々受けるヘレンさんすげぇ…


「うらぁ!うらぁ!とりゃぁ!」

―パン、パン、パーン!

「…ふぅ。」

―トン。

「うぉ!!??」


ローランドさんのラッシュを軽々受けて、ヘレンさんは最後にそっと肩に触れた。

その後の光景に俺は驚いた。

ローランドさんは5メートル程吹き飛ばされた。


「くぅ。効くなぁ。気をつけてるつもりなんだが。」

「…まだまだ。」

「はは。ヘレンさんは厳しいな。でもまだ俺はやれるぜ。」


僅か1分くらいの時間だっただろうか。

筋肉質で大柄なローランドさんを細身のヘレンさんが軽くいなす光景。

これが魔力の使い方なのか?

俺はじっと2人の戦いを見入っている事にあとで気づくことになる。

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