第39話 攻撃って蹴るの?

グルゥゥゥゥ…

ガァ!!


「前にあった熊さんより小さいけど、やっぱり熊さんはでかいね。よっ。」

―ガァ!ビュン!

「和歌先輩、これが普通のサイズかと。うぉ。」

―ガァ!ビュン!


熊さんが前足…手?でひっかく攻撃してくるが、当たらないように回避してる俺達。

熊と対峙して冷静に慣れているのは、きっと前に見た森の熊さんより小さいからか。

グルゥゥ…


「ほらほら。避けてるだけじゃ倒せないよ。」

「ルカさん、そうは言いましても…おっと。」

―ガゥ!ビュン!

「ルカちゃん。攻撃って蹴るの?きっと痛いよ。」

「魔力で強化して蹴れば、蹴った脚も痛くないわ!」

「ん?私じゃなくて、熊さんが。」

「そっち!?いいからやんなさい!」

「わかったよー。」


こんな時でも自分より相手を気遣う先輩。やさしいな。


「…翔もだぞ。」

「あ、はい。ヘレンさん。」

―グルゥ…ガァ!ビュン!ビュン!

「翔くん。左から!」

「はい。和歌先輩。」

―ドゴ!!

グルゥゥ!!ビュン!

「きゃ!あぶないなー。」

「おわっ。攻撃が軽かったかな?」


熊さんの攻撃を避けて、先輩が右から。

俺が左から蹴りを入れてみたけど。

熊さんは一瞬怯んだけど、そのまま攻撃してきた。


「んー。ならあれをやってみよう。翔くん、ちょっと熊さん引きつけてて。」

「あれ?ひきつけてて…あー成る程。了解です。」

「すぅー…。はぁ…。」

「和歌先輩を死角に入るようにするには…。よっ!はっ!せや!」

―ヒュン…ドカ!ドカ!

グルゥ!ガゥ!

「よっ。こんなもんかな。」

「ん!いい感じ。いっくよぉー、ドーン!」

―ドゴーーーーン!!

グルゥゥゥゥゥゥ…。


リコさん直伝のタックルが熊さんにクリーンヒット。

熊さん飛んでった。


「よし!今度は当たった。」

「和歌先輩!今度はって!?やっぱり練習の時、俺に当てる気でしたか?」

「え?あ。…初めて当たったよ!」

「あ。って言いましたよね。マジで当たらなくて良かったです。」


先輩の言い回しが少し気になるところはあったけど。

あれが俺に当たってなくて本当に良かった。

まともに受けた熊さんをちょっと同情する。


「正直驚いたわ。フォローするつもりだったけど、なんとかしちゃったわね。ヘレンも驚いてるわ。」

「……。」


飛んでった熊さんを、目で追っていたルカさんが苦笑いしている。

ヘレンさん驚いてるの?俺にはいつもと変わらない用に見えるけど。


「2人はよく相手の事が分かってるわね。連携もばっちりじゃない。」

「あれやるって言ってましたし、やる事を指示貰いましたからね。」

「ん。翔くんなら分かると思ったよー。」

「…無事なら。」

「ヘレンが無事であればいいって。」

「ルカさんはヘレンさんの事よく分かりますね。」

「ん?聞いてれば分かるようになるわよ。翔とはよく喋ってるみたいだし。」

「ですかね。」


とりあえず、俺と先輩は熊さんとの戦いに勝利した。

ルカさん、ヘレンさんはいつでもフォローできるようにしてくれていたみたいだけど。

俺達4人は、少し話す余裕が出てきた。


…飛んでいった熊さんが原因で、大変な事態に巻き込まれる事は俺達4人はまだ知らない。

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