第63話 冬の朝 


 雨が降り風が変わり、空気が冬の香りを運んでくる。


 お日様は落ちるのが早くなり、昇るのが遅くなっている。


 習慣とは恐ろしいもので、日曜日は休みなのにいつもの時間に目が覚める。

 今の時期、この時間帯はまだ暗く、空気はすでにかなり冷たく冷え込んでいる。


 週に一度のこの貴重な日にもかかわらず、老犬は私の寝室の外で戸をカリカリやったり、そわそわしたり、クンクンと泣き出したりして私を起こし、私はしぶしぶ起きてゆく…


 ああ、また今日も早起きか…

 とは思うのだが、ほんと言うと私もそんなに嫌いではない。


 ことに冬の朝…

 天気がよさそうな冬の朝は。


 起きた時は暗く、東の空が少しづつ白んで空に雲が無さそうな朝、私は老犬とちょっと遠くにある小高い丘に登る。


 すると、ちょうど丘に登った頃に、それはそれは美しい朝日と出会うことが出来る。

 辺り一面を真っ赤に染めてキラキラ輝く街を見下ろすことが出来るのである。


 私は空気の冷たさに震えながら、お日様からの直接の陽の光を浴びて、まるでミーアキャットのように全身で太陽の温もりを感じながらじっとしている…


 一匹の老犬と共にジーッとソーラーエネルギーを身体に蓄える。


 静かに目を閉じて…

 深く息を吸い込み、ゆっくりと息を吐く…


 老犬もちゃんとお座りして、体中で陽の光を浴びている…

 

 

 …美しいものは一瞬の輝きを放って静かに朝の始まりを告げる。


 丘を下り、街に戻る。


 普段は出勤や通学で慌ただしい頃なのだが…


 少し朝寝坊な日曜日の街。

 

 紅葉していた木々の葉がキラキラと黄色や赤の枯れ葉になり、朝日を浴びながら、静かに、ゆっくりと、落ちてゆく…






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