第48話 梅雨明けて
“梅雨が明けたらしい”と、言う、曖昧な宣言と共に暑い季節が始まった。
2・3日前は梅雨明け前の激しい雨。
そして、今朝は青い空と白い雲。
みるみる気温も上がって…
窓は締め切っているのだが、けたたましいセミの鳴き声がかなりの音量で店の中にも入って来る。
お客さんの1人が、
「遂に、夏が鳴き始めたか」
と、窓の向こうのセミが鳴く街路樹を少し恨めし気に見上げながら呟く。
最近よく来る営業マン風の男。
慌ただしくランチセットを平らげて、炎天下の夏の街に出て行った。
3時を過ぎた頃、黒い雲が現れ始めると遠くで雷が鳴り始める。
近くでひとつ大きな雷が鳴ったかと思うと、大粒の雨が。
夕立。
アスファルトの道路に叩きつける激しい雨音と共に、あっという間に世界が一変してしまった。
店の窓の向こう、さっきの営業マンがカバンを頭の上に載せ、小走りで駅の方へと走っていた。
しばらくして、雨は上がり、再び、夏の太陽が顔を出す。
街全体が水打ちをした様な、涼しい風が通り抜けている…
みずみずしい世界が…
路地に咲いていた紫陽花はもう枯れてしまっている…
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