114話 『姉は恋する異世界乙女のお手伝いをする』
其の十七。再び。
こんにちは。
恋する乙女。愛の奴隷。レア・レアーイ・レアインです。
前回までのあらすじ!
聖王レアレアと
レアレアの生まれ変わりである私は、親友面したブス女に裏切られ、王子様を寝取られてしまった。
そこで私はブスに天誅を与えるべく、黒魔術で
光と闇が、久方ぶりに邂逅す。
世界が、震え出した……!
「何ぶつぶつ言ってんのよ。さっさと要件済ませて、あたしを元の世界に戻しなさい」
と文句を言っている『喋る指』が
私の片割れ。分身。
「誰が片割れよ、うざったいわねあんた。何であたしをセータン? って呼んでんのかは知らないけど、とにかく急げって言ってんの!」
「ぶへっ」
これが闇のフレンドシップ、スキンシップってヤツね。
私は思わずゲロ吐いちゃいそうになるのを堪え、
あのクソゲロ女に、闇の裁きを与えよ! ってね。
すると
ちょっぴり失礼な態度。ツンデレってわけね。
「復讐ねえ。ただの八つ当たりな気もするけど……まあ別に良いけどさ。でもそんな回りくどい真似するより、直接その
「夜這いですとぉ!?」
唐突な提案。
さすが悪魔の王。ピュアな私は思いもつかなかったような、極悪非道のアイデアを出してくれるわね。
「誰が悪魔の王よ?」
「ぶへえっ」
再び鳩尾への攻撃。
まったく悪魔は照れ屋だぜ。
「ぐへへひひへ。でも夜這いかあ。なるほど、それは話が早そうでよろしいわね」
「そう。気に入って貰えて嬉しいわ。じゃあ早速」
「そうね、早速……! うっひゃひゃひゃ!」
そして、我が意中の先輩宅へと向かったの。
刻は深夜。町全体が眠っているように静か。
私達は街灯と懐中電灯の明かりを頼りに、先輩んちに辿り着いたわ。
先輩も、もう眠っているはずよ。
彼はスポーツマンで朝練があるし、部屋の窓も真っ暗だからね。
さて。
先輩の部屋を見上げながら、私は
「先輩は最近ストーカー被害に苦しんでいるらしく、自宅の戸締りが厳重になってるのよ。この前も扉をこじ開けようとしたら、けたたましいブザーが鳴って警備会社の人が駆け付けて来たんだから」
まったく、ストーカーなんて最低ね。
どこのどいつか知らないけど、私の先輩に手を掛けようとするなんて身の程を知りなさいよね。
「そのストーカーってあんた……いや、そこまで深入りはしないけど」
久々のシャバで、もう疲れちゃったのかな?
「とにかくさっさと済ませましょう。要はホームセキュリティが作動しないようにして、鍵を開ければいいのよね?」
「その通りよ
「セータンじゃないけど、そうね……あたしがテルちゃんの部屋に突入する時にたまに使う、『開錠能力』が役に立つわね。それにセキュリティ対策として、電気能力を付加させれば……」
「開錠! オゥ、良いねえ」
私が喜びの声を上げると、
猿の足指みたいな
こうして小高い場所に乗ってるのを見ると、ちょっと気持ち悪いよね。えへっ。
「おだまりストーカー女。とにかく開けるわよ、オラッ!」
そして先輩宅の灯りが全て消える。
それだけでなく、ご近所さん宅や街灯なんかも軒並み消灯。
辺り一帯が停電になったの。
そして暗闇の中で、次はバキンっと金属が弾けるような音。
懐中電灯で照らすと、先輩宅の扉が破壊されて開いていたわ。
停電しているからか、それとも
「やっぱり侵入はこの手に限るわね。手じゃなくて足の指だけど!」
さすが
こんなアッサリとセキュリティを突破するなんて、魔法って凄い!
完全に力技にも見えたけど!
なーんて私が感動してると、
「停電かしら?」
「それより何だ、今の音は……おい、ドアが開いてる!? 誰だ、そこにいるのは!」
先輩のお母さんとお父さん。
つまり私の義理の両親が、懐中電灯を手に持って現れたわ。
でも
「ややこしくなるから、これ以上新キャラ増えんな!」
と咆哮。
「うああ……?」
「ふぁぁ……」
その声を聞いただけで、両親はあっけなく気絶しちゃった。
「超能力で眠らせたわ。今の内に
「さっすが、頼りになるぅ!」
私達は二階に上がり、先輩の部屋に侵入。
彼は健やかなイケメンフェイスでスヤスヤとお休み中だったわ。
「ぐっひひひ。よう眠っとりますわぁ」
「それじゃ、後はレイプでも妊娠でも好きにしなさいアホ女」
「あざーす! ウヒヒヒヒ」
私は先輩の掛布団に手を掛けたわ。
でも
「ここまでお膳立てしてあげたんだから、そろそろあたしを元の世界に返してくれないかしら?」
「元の世界……魔界ね。良いけどどうやって?」
「魔界じゃないけど、呼び寄せた時と同じ方法でよ」
「な~る~」
同じ方法というと、『箱』に私の血を飲ませるってワケね。
私はバッグから、金属製の呪い箱を取り出したわ。
ここで断って悪魔を怒らせても損だし、ノリノリで手首を掻っ切って血を出したの。
「うわ……一切の躊躇も無くリスカしたけど……あんたもしかして、いつも……いいえ、深入りはしないけど」
でもメンヘラ扱いはお門違いなのだけれどね。
私はただ、自分の血を固めて先輩の下駄箱に入れたりしてるだけの、純粋な乙女よ。
ああそうだ、今もせっかく手首切ったんだし、寝てる先輩に直飲みして貰おうっと。えへへ。
「……ああ、これ以上あんたに関わってると気が狂いそうだわ。じゃあね、バイバイ」
「バイバイ
「もう絶対呼ばないで!」
そして
どうやら本当に魔界へ帰っちゃったみたい。
不思議な体験だったわね。
まあでも、今は悪魔の余韻に浸っている場合じゃ無い。
だって目の前には、憧れの王子様が無防備に眠っているんだから。
「……ぐっひゃひゃひゃ……しぇんぱぁ~い、今結ばれましょうねぇ……」
私は先輩の布団を剥ぎ取った。
彼ったら上半身裸で寝ちゃってる。マッチョな腹筋がセクシー。
さて下半身も確認しないと……と、私は先程リストカットで使ったナイフを、先輩のズボンに当て……
「わ、わあああああ!」
「うぎゃ!?」
突然、背後で女の叫び声が上がったわ。
そして私の後頭部に妙な衝撃。
振り返ると、裏切り者がそこにいた。
私の元親友。そして先輩と付き合っている、エロ女。
手にずっしりとした厚手の鉄鍋を持っている。
頭が熱い。痛い。
この女、もしや……
「私を……親友の私を、殴ったなああああああっ!?」
「あ、あんたこそ、私がトイレに行っている間に……そのナイフは何よ!? その血は何よ!? 私のカレシに何をしたの!?」
そう言ってアホビッチが、今度は私の横っ面を殴りやがった。
「うぐあああっ!」
重い鉄鍋のインパクト。頬骨が砕け、歯が吹き飛ぶ。
この馬鹿女、何か勘違いをしているみたい。
というかコイツ、どうしてパジャマを着ているの?
もしかして、両親公認でお泊り会でもやってたというの?
「やっぱり、てめえを殺すべきだった……殺す、殺……す……せ、
猿の小指を呼び出す私。
でも
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