彼の近辺調査
「チュ……チューしたよ!ねぇ!」
私と、そして環ちゃんが陰から彼を見ていると、彼と共にいた女にキスされたのだ。
「あぁ!手繋いで歩いていったよ!」
「あぁ・あ・・あぁ・・・」
環ちゃんもどんどんと白くなっていく。
「一体あの女は誰なの・・・?」
私は楽しげ(?)に話す2人の姿を眺めながら言った。
お話しましょう、どうしてこんな事になっているのかを・・・
※
「最近、彼の様子がおかしい?」
少し蒸し暑さを感じ始めた昼下がり、私は環ちゃんと2人だけの女子会を開いていた。
「うん、色々気になるところがあってね・・・」
「ちょっと最近帰りが遅かったり、手作りのお菓子を持って帰ってきたり・・・。怪しいところが多すぎるの・・・」
「黒よね。間違いなく」
即答だった。
確かに環ちゃんの言う通り、私が知らないところで女を作っているかもしれない、でも
「やっぱり彼のこと信じたい」
「別に神木さんと彼は付き合ってないでしょ・・・」
環ちゃんが何か言っていたが、イマイチ聞こえなかった。
「どっちにしろ将来の旦那様の浮気は見過ごせないの!」
「私は2人の関係の方が気になってくるよ・・・。まぁ私の少し気になるし?手伝うくらいならいいけど・・・」
「そうと決まれば、色々と考えようか!」
こうして案を出し合い、私たちは決戦の日を向かえた。
「神木、今日も遅くなるだろうから夕飯少し遅くなるぞ。もしお腹がすいたら戸棚のを適当に食べればいいからな」
「う、うん・・。いってらっしゃい・・・」
「・・?どうした、かなりソワソワしてるが。何かあるのか?」
「何でもないから!それとご飯はずっと待ってるからね!」
「そうか」
私は必死に話を逸らし、彼は家を出ていった。
そして私たちは行動に取り掛かった。
「・・・もしもし、こちらメロディ今付けるようにしてターゲットを尾行している。オーバー」
するとノイズ音が聞こえた後、トランシーバーから声が聞こえてきた。
『こちらスプリンター。どうやらターゲットは徒歩で移動の模様、メロディと合流の後尾行する。オーバー」
「メロディ了解」
お互いノリノリだった。
「それにしてもいつもどこに行ってるんだろうね」
「そうだよね。彼がコッソリ彼女を作るとは思えないし・・・」
「私は?・・・ちょっと待って、どこか入ってった」
そう言って彼が入っていったビルを確認し、中に入った。
「入ったお店って・・・本当にここよね?」
「そうだと思うけど・・・」
私もそう言ったが、私が一番信じられなかった。
そう彼が入っていったのは、彼が以前入りずらいと言っていたお店よりも何倍も眩しいケーキ屋だった。
「ここって友達が凄い美味しいって言ってたお店だ。どうしてこんな所に彼が・・・」
もう何がなんだかさっぱりだ。
「環ちゃんどうする?中入ってみる?」
「うーん・・ケーキ買うだけだったらすぐ出てくるだろうし待ってよ」
「そうしようか」
そうしてしばらく待っていると、環ちゃんの読み通り彼がケーキのような物を持ちながら出てきた。
「やっぱりこの前のお菓子のお礼とかなのかな・・・」
「神木さんへのお土産・・は考えられないし恐らくそうかな」
「なんだか言葉にトゲがあった気が・・・!またどこかへ入っていったよ」
「あそこは本屋かな、入ってみよ」
環ちゃんに言われるがまま店内に入ると、少し奥に彼が見えた。
「一体何を読むんだろ」
私たちは少し離れた所から、彼の本を確認した。
「えっと『正しい年上女性との関係2』だって」
1巻どこなのよ
「年上女性!?彼と年上って合わないと思ってたんだけど」
「きっと大学生を誘惑する魔女に違いないね」
「別にそこまで言ってないけど・・・あ、見て別の本を読み始めたよ」
そうして彼が読んでいる本を見てみると、『男性の正しい子供のしつけ方2』と書いてあった。だから1巻どこなのよ
「神木さん、子供ってどういう事なのよ!」
「多分、その年上女性との間に・・・」
自分で言ってて辛くなってきた。
「これはいよいよやばいんじゃ・・・」
そんな事を言っていると、彼が小さく呟いた。
「やっぱりあいつと子供を比べるのが間違いだったか」
そう言って本を元の場所に戻すと、店を出ていった。
「え?今のどういうことなの?」
「・・・複雑な気分よ」
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