彼の近辺調査

「チュ……チューしたよ!ねぇ!」


私と、そして環ちゃんが陰から彼を見ていると、彼と共にいた女にキスされたのだ。


「あぁ!手繋いで歩いていったよ!」


「あぁ・あ・・あぁ・・・」


環ちゃんもどんどんと白くなっていく。


「一体あの女は誰なの・・・?」


私は楽しげ(?)に話す2人の姿を眺めながら言った。


お話しましょう、どうしてこんな事になっているのかを・・・



「最近、彼の様子がおかしい?」


少し蒸し暑さを感じ始めた昼下がり、私は環ちゃんと2人だけの女子会を開いていた。


「うん、色々気になるところがあってね・・・」


「ちょっと最近帰りが遅かったり、手作りのお菓子を持って帰ってきたり・・・。怪しいところが多すぎるの・・・」


「黒よね。間違いなく」


即答だった。


確かに環ちゃんの言う通り、私が知らないところで女を作っているかもしれない、でも


「やっぱり彼のこと信じたい」


「別に神木さんと彼は付き合ってないでしょ・・・」


環ちゃんが何か言っていたが、イマイチ聞こえなかった。


「どっちにしろ将来の旦那様の浮気は見過ごせないの!」


「私は2人の関係の方が気になってくるよ・・・。まぁ私の少し気になるし?手伝うくらいならいいけど・・・」


「そうと決まれば、色々と考えようか!」


こうして案を出し合い、私たちは決戦の日を向かえた。


「神木、今日も遅くなるだろうから夕飯少し遅くなるぞ。もしお腹がすいたら戸棚のを適当に食べればいいからな」


「う、うん・・。いってらっしゃい・・・」


「・・?どうした、かなりソワソワしてるが。何かあるのか?」


「何でもないから!それとご飯はずっと待ってるからね!」


「そうか」


私は必死に話を逸らし、彼は家を出ていった。


そして私たちは行動に取り掛かった。


「・・・もしもし、こちらメロディ今付けるようにしてターゲットを尾行している。オーバー」


するとノイズ音が聞こえた後、トランシーバーから声が聞こえてきた。


『こちらスプリンター。どうやらターゲットは徒歩で移動の模様、メロディと合流の後尾行する。オーバー」


「メロディ了解」


お互いノリノリだった。


「それにしてもいつもどこに行ってるんだろうね」


「そうだよね。彼がコッソリ彼女を作るとは思えないし・・・」


「私は?・・・ちょっと待って、どこか入ってった」


そう言って彼が入っていったビルを確認し、中に入った。


「入ったお店って・・・本当にここよね?」


「そうだと思うけど・・・」


私もそう言ったが、私が一番信じられなかった。


そう彼が入っていったのは、彼が以前入りずらいと言っていたお店よりも何倍も眩しいケーキ屋だった。


「ここって友達が凄い美味しいって言ってたお店だ。どうしてこんな所に彼が・・・」


もう何がなんだかさっぱりだ。


「環ちゃんどうする?中入ってみる?」


「うーん・・ケーキ買うだけだったらすぐ出てくるだろうし待ってよ」


「そうしようか」


そうしてしばらく待っていると、環ちゃんの読み通り彼がケーキのような物を持ちながら出てきた。


「やっぱりこの前のお菓子のお礼とかなのかな・・・」


「神木さんへのお土産・・は考えられないし恐らくそうかな」


「なんだか言葉にトゲがあった気が・・・!またどこかへ入っていったよ」


「あそこは本屋かな、入ってみよ」


環ちゃんに言われるがまま店内に入ると、少し奥に彼が見えた。


「一体何を読むんだろ」


私たちは少し離れた所から、彼の本を確認した。


「えっと『正しい年上女性との関係2』だって」


1巻どこなのよ


「年上女性!?彼と年上って合わないと思ってたんだけど」


「きっと大学生を誘惑する魔女に違いないね」


「別にそこまで言ってないけど・・・あ、見て別の本を読み始めたよ」


そうして彼が読んでいる本を見てみると、『男性の正しい子供のしつけ方2』と書いてあった。だから1巻どこなのよ


「神木さん、子供ってどういう事なのよ!」


「多分、その年上女性との間に・・・」


自分で言ってて辛くなってきた。


「これはいよいよやばいんじゃ・・・」


そんな事を言っていると、彼が小さく呟いた。


「やっぱりあいつと子供を比べるのが間違いだったか」


そう言って本を元の場所に戻すと、店を出ていった。


「え?今のどういうことなの?」


「・・・複雑な気分よ」

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