側室(愛人)降臨
今日は土曜日の朝。
休みの日は、俺も神木もグズグズなので起きるのは昼近くだ。
タッ・タタタッ
ベッドの高さが低いからだろうか外から歩いてくる軽快な足取りが耳に響いた。
そのリズムを聞きながらウトウトしていると、俺の部屋の近くでその足音は止まった。
・・・ガチャ
その音に俺は身体を強ばらせた。
そう間違いなく我が家のドアの鍵が開く音だった。
「ちょっとー!起きてる?」
たっ、環だと・・・
この状況をあいつに見られるのはヤバすぎる、俺はとっさに判断した。
「うにゅ・・?誰か来たの?」
当然のようにベッドに潜り込んでいる神木(全裸)が目を覚ました。
「ちょっとー!部屋入るよ!」
「やっぱり誰か来て・・にゃっ!?」
俺はとっさの判断で、神木を抱き抱える状態でベッドに深く潜り込んだ。
「あっ、やっぱりまだ寝てる。起きてよ!せっかく幼馴染みが起こしに来てるんだよ!」
来訪者は俺の布団を引き剥がそうとしてきた。
「分かった、起きてるから!少し待っててくれ」
「知ってるよ?そうやっていつも二度寝をすることくらい」
「それはお前のことだ!」
こいつ力強すぎるだろ・・・
「大人しくベッドから出てきなさ・・・いっ!」
俺のベッドから布団が引き剥がされた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
その場の空気が一瞬で氷点下を迎えた。
「もしかしてこれが俗に言う・・・修羅場!?」
元凶(全裸)が1番落ち着いていた。
「あー・・・環?誤解するな、こいつは少し住ませてやってるだけでそういう関係じゃないんだ」
「一緒のベッドで寝て?しかも全裸の女の子がただの同居人だと言いたいの?」
彼女の特徴的なポニーテールがだんだんと重力を無視し始めた。
「待ってくれ、本当に誤解なんだ」
「そうだよ!えっと・・・側室さん?」
神木が珍しく俺のフォローを・・・ん?
「おい全裸女、今なんて言った?」
「だから、私が本命なんだからあなたは2番目だから側室って言ったの」
ついに環の髪がリアル怒髪天にまで達した。
「・・・ねえ、キッチンに包丁あったよね?」
「待て、アイスピックの方をオススメするぞ」
「あれ!?味方いない!?」
1度もお前の味方をしたことはない。
そんな事がありながら、なんとか殺人未遂で済み本題に入ることにした。
「先に環から紹介するぞ、こいつは高宮 環。一応幼馴染みでこの前行った喫茶店の娘だ」
「・・・よろしく」
「環、お前そういうキャラじゃないだろ・・・普段通りにしてくれ」
「この状況で普段通り出来る奴なんていないだろ!」
「私は普段通りだよー」
お前はもう少し場を弁えてくれ、それといい加減に服を着てくれ。
「そしてこっちが神木 凛。あー・・・説明すると長くなるんだが要するに同居人だ」
「う、嘘よ!きっと毎晩えっ・・えっちな事してる関係なんでしょ!」
「断じて違うからな」
こういう事に、一切免疫が無い環は、頭からけむりが出るかのように顔が真っ赤になっていた。
「だったらどうして全裸で同じベッドに入るのよ!」
すると服の代わりにするように布団にくるまった神木が言った。
「付き合ってはいない、でもこうやって裸で一緒のベッドに寝ている。・・・後は分かるよね?」
悪魔かこいつは
「それって・・・セ、セフ・・・」
ついに環が顔を真っ赤にしながらぶっ倒れた。
お前、いつも彼女だって言い張ってるだろうが。
環が起きるまでに服を着替えたりと身支度を整えていると、環が目を覚ました。
「それで、実際のところはどうなんですか?全裸女さん?」
「さっきも言った通りですよ?側室さん?」
しばらくそうやって睨み合っていたが、環が聞いてきた。
「本当に2人は付き合っているの・・・?」
「だとしてもあなたには何の関係もないのでは?」
「関係あるもん!約束があるから!」
いきなり環が立ち上がって言い出した。
「約束?」
「中学校の頃に約束したから!ね?」
どうやら俺に話が振られたようだ。
「ああ、恋人が出来たら一番最初に報告する、ってやつの事か?」
意外と覚えているもんだ。
「覚えててくれたんだ・・・」
「どうした?顔が緩みきってるぞ?」
「な、何でもないから!」
すると神木が言い出した。
「だったらこの場で報告するだけでは?」
「頼むからややこしくさせないでくれ・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます